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吃音症とは?発達障害との関連性や症状・起こりやすい状況・治療方法など詳しく解説

不機嫌な女の子
自分の意思とは関係なく、スムーズに発語ができない吃音症という症状をご存知ですか?吃音症は言語に関する発達障害の一種とされており、自閉スペクトラム症やADHDなどとも深い関連性が指摘されています。

幼い子供が発達の過程で発症するものや、大人になってから発症するものなど、吃音症にはさまざまなケースが存在します。また、吃音症の人と関わる際には周囲の人の合理的配慮が必要です。

今回は、吃音症について「どのような障害なのか」「障害者手帳は交付されるのか」「吃音症を疑った際は何科を受診すればいいのか」「吃音症の人にどのような配慮が必要なのか」など、詳しく解説していきます。

吃音(きつおん)症とは

吃音症とは、本人の意思に関係なく発語がスムーズに行えない発語障害の一種です。同じ言葉を繰り返してしまったり、言葉を間延びさせたりする症状が代表的なものとして知られています。

吃音症は発達途中の子供に比較的多く見られる症状で、「どもり」「どもる」などと言われることもあります。ただし、これらの言葉は差別的な意味合いを持つケースも少なくありません。そのため、現在はあまり使われなくなっています。

吃音症は以下の2種に分かれるのが特徴です。
  • 発達性吃音
  • 獲得性吃音
それぞれの吃音症の概要についてもみていきましょう。

発達性吃音

発達性吃音は幼少期に起こる発達性の吃音症で、吃音症の9割は発達性吃音と言われています。2~5歳の発語能力の発達が著しい時期に起こりやすく、幼児期の発症率は約8%です。幼い子供が吃音症を発症する割合は比較的高いものの、自然と治るケースも多いと言われています。

特に男児に発症する割合が高く、男女比率は男:女=2~4:1というデータもあるようです。

子供の発達性吃音には以下の3つのいずれか、もしくは複数が関係していると考えられてます。
  • 体質によるもの
  • 発達によるもの
  • 環境によるもの
遺伝的に吃音症になりやすい体質であるケースや、発達の過程で吃音症が発症するケース、環境の影響を受けて吃音症を起こしているケースなど要因はさまざまです。しかし、全体の6~8割は発症から3年以内に治っていることから、全人口の有症率は約0.8%と言われています。

獲得性吃音

獲得性吃音は、発達性吃音と違い10代後半以降で発症する吃音症を指します。
獲得性吃音は以下の2つに分類され、それぞれに異なる要因が考えられます。
獲得性神経原性吃音(脳障害や神経障害などの要因によって起こる吃音症)
獲得性心因性吃音(ストレス、トラウマなどが要因となって起こる吃音症)

獲得性吃音は「大人の吃音症」としても知られており、社会生活のなかでさまざまな不便を感じる障害と言えます。普段の会話であれば何とかスムーズにできるものの、吃音症で電話対応が上手くできないという人も少なくありません。

吃音症は発達障害に分類されている

発達障害とは、生まれつき発達に凹凸を持つ障害のことを言います。厚生労働省による発達障害の定義は以下のとおりです。
発達障害は自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能障害であってその症状が通常低年齢において発言するもの
参照:厚生労働省 発達障害者支援法
吃音症は「その他のこれに類する脳機能障害」に分類されています。

障害者手帳が交付されることもある

発達障害者支援法によって定められた基準を満たしている場合、吃音症として医師の診断があれば障害者手帳の申請が可能です。

一般的には精神障害者福祉手帳が交付されるケースが多いようですが、症状によっては身体障害者手帳が交付されることもあります。

障害者手帳の交付基準を満たすのは社会生活において支障がある場合に限られるため、子供の場合は吃音症のみで障害者手帳が交付されるケースは少ないでしょう。

しかし、過去に4歳児が吃音症において精神障害保健福祉手帳の申請が認められ交付を受けた例も存在します。幼稚園などで合理的配慮を求めるため障害者手帳を提示することで「吃音は発達障害の一種」として認識してもらえたという記録がありました。
参考

吃音症と発達障害の併発について

吃音症は自閉スペクトラム障害や注意欠如・多動性障害との併存率が高いと言われています。割合としては1~2割程度だと考えられており、特にコミュニケーション能力の発達に遅れが見られるケースで吃音症の併発が多い傾向にあります。

吃音症を発症するからといって、必ずしも自閉スペクトラム障害や注意欠如・多動性障害などを併発しているという訳ではありません。しかし、発達障害によって口の動きを制御できないケースや自閉スペクトラム障害や注意欠如・多動性障害の特性を周囲に理解してもらえないことからストレスを感じて吃音症を発症するケースも少なくありません。

吃音症の症状が見られる際には、その他の発達においても注意深く見守る必要があるでしょう。

吃音症の症状

続いては、吃音症の症状について詳しく紹介していきます。
吃音症の症状は同じ音を繰り返してしまうような言語症状だけだと思われがちですが、発語に限らずさまざまな症状があります。

言語症状

吃音症の言語症状には以下のようなものがあります。
【連発】
話始めの音を何度も繰り返してしまう症状。
「わ、わ、わ、わ、わたし…」や「あ、あ、あ、あ、あのね」など、頭の音を連発するケースが見られる。
【引き延ばし】
話始めの音を間延びさせてしまう症状。
「わーーーーーたし」「あーーーーのね」など、頭の音を伸ばしてしまうケースが見られる。
【ブロック】
話始めの音が出てこず、スムーズに話始められない症状。
話そうと口を動かしているのに音が出ず、ワンテンポ遅れて話始めるようなケースが見られる。

その他の症状

本人が自分自身の吃音症を理解している場合、吃音にならないような話方を工夫するケースがあります。特に連発の症状が出やすく周囲の人にからかわれたりした経験がある場合、なるべくスムーズに話始められるよう、自分なりの話始めの型を作ることがあるようです。

話始めに「あのー…」など助走を付けたり、吃音症がでにくい言葉に置き換えて話すことがあります。また、吃音症にコンプレックスを感じて、話すこと自体を避けてしまう人も少なくありません。

これらの行動は、一見すると吃音症を克服しているようにも見えますが、吃音症が治っている訳ではないため症状の一種と言えるでしょう。

吃音症の進行

吃音症の進行は4段階に進んでいくと考えられています。進行は1層から4層までに分類して評価され、ストレスや不安などの心理状態も大きく影響すると考えられています。

第1層

第1層では連発や引き延ばしなどの症状が多く見られます。幼児期の吃音症は第1層のケースで治まることも多く、話している本人は自分が吃音症であるという自覚を持たない場合が多いです。

話すことへのストレスや不安などはない状態を指します。

第2層

第2層では、連発や間延びに加えブロックの症状が見られることも多いです。自分が吃音症であるという自覚を持ち始めており、話しにくい場合には反動をつけるなど自分で工夫して話そうとする様子も見られます。

第3層

第3層では自身の吃音症を自覚しており、話始める前の助走や話やすい言葉への言い換えなどをするケースが多くみられます。スムーズに話せないことへの強いストレスや周囲の嘲笑などを受けないか不安を感じているケースもあり、自分自身が吃音症であることに否定的な感情を持ち始めることも多いです。

第4層

第4層では、強いストレスから極力話すことを避けたり、話そうと思っても吃音症が出てしまったらどうしようという不安から話せなくなったりするケースが見られます。
不安を感じれば感じるほど、緊張からスムーズに発語できず悪循環に陥る人もいます。

吃音の症状が出やすい3つの状況

吃音症は以下の3つの状況で出やすいと言われています。
  • 自分が吃音症であることを自覚し「吃音がでないようにしよう」と強く意識しているとき
  • 緊張感や不安感が強いとき
  • 苦手な言葉を発語するとき
吃音症は緊張や不安などの心理状態に影響を受けることがあり「吃音が出ないように話そう」と強く思い過ぎて緊張してしまったり、人前に出て話すことに不安を感じたりしているときに出やすいです。

また、人によってはサ行やラ行など、特定の音を発語しにくい事もあり、苦手な音を発語する際に吃音が出やすい人もいます。

子供が吃音症かもしれない、と思った時はどの診療科に行けばいい?

吃音症の相談は以下の診療科で受け付けてもらえます。
  • 耳鼻咽喉科
  • リハビリテーション科
  • 心療内科
その他、発達障害に関する支援を行っている自治体の施設に相談してみるのもよいでしょう。
  • 発達障害者支援センター
  • 療育センター
  • 保健センター
上記の施設でも、吃音症をはじめとする発達障害についての相談ができます。

子供の吃音症は治る?

吃音症は発達の過程で出やすい症状であり、多くの場合成長と共になくなっていきます。ただし、無理に吃音症を治させようとして「話し方が変だよ。ちゃんと話そうね」などと促してしまうと、今まで無自覚だった吃音症を自覚し、余計に症状が悪化することもあるでしょう。

吃音症を改善するための直接指導には専門的な知見が必要なため、言語聴覚士などの指導に従った環境調整と周囲の合理的配慮が必要です。

吃音症の対処方法

吃音症の対処は、主に以下の3つの方法とります。

その1.環境調整

吃音症が発達障害であることを周囲の人が理解し、合理的に配慮することを環境調整といいます。吃音症の子供が話しやすい環境を作り、スムーズに話せる成功体験を積み重ねることを目的とした取り組みです。
  • 話を遮らない
  • プレッシャーを与えない
  • 言葉を勝手に補足しない
  • 吃音をからかう子どもがいる場合は、大人がしっかりと説明しやめさせる
周囲が吃音症を受け入れることで、安心して話すことができるようになります。

その2.発語指導(トレーニング)

療育をはじめとする発語指導によって吃音症の症状を改善させる方法もあります。吃音症の場合、口の動きを自分自身でコントロールできないケースが多いため、複式呼吸や発声のトレーニングなどを行い、発語の訓練をします。

その他、緊張感を和らげるイメージトレーニングや物事が起きた時の受け取り方(認知)をコントロールして不安や緊張を抑える認知行動療法などによりトレーニングを行うケースもあります。

その3.薬物療法

現在、日本では吃音症に対する薬物療法のガイドラインがなく、医師の判断によってさまざまな薬剤が処方されています。

大人の発達障害は強い不安感などから発症しているケースが多いため、抗不安薬などが処方されるケースもあります。しかし、薬による症状の改善は一時的なものなので根本的な解決とは言えないでしょう。

薬物療法はあくまでサポートとして、環境調整や発語指導による改善が望ましいとされています。

吃音症の子供への対応で気を付けたいこと

吃音症の子供に対応する場合には、以下の点に注意しましょう。
  • 子供が話し始めた場合、話し終わるまで自然なアイコンタクトを保ちながら待つ(言葉を遮らない)
  • 正しく発語ができていなくても勝手に言葉を補わない
  • 「気にしないで」「緊張しないで」などの声掛けを避ける(吃音症は発達障害であることを周囲が理解する)
  • 早く答えた人が勝ち、など発語を競うような状況を避ける
  • 自然に安心して話せる状況を作る(順番に話すなど)
特に、吃音症への理解が足りていないと「落ち着いて話せば大丈夫だよ」など、精神論を強制してしまうことがあります。吃音症は脳の働きによって口の動きを上手くコントロールできないため、気持ちが落ち着いたからといってスムーズに話せるようになる訳ではありません。

吃音症の子供への対応は、いかに周囲の人が吃音症について理解しているかがポイントとなります。

吃音症への理解を深めよう

発語に困難を持つ吃音症について紹介してきました。吃音症は子どもにとって身近な障害で、自然に治ることも多いです。一方で、体質的な問題や環境の問題によって進行してしまうこともあるため、周囲の大人は慎重に見守ってあげる必要があるでしょう。

吃音症についての理解を深めると共に、医療機関への受診や療育を受けるなどの方法で吃音との付き合い方を本人や周囲の人が学んでいくことが重要です。

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