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軽度知的障害とは?発達障害との関係や診断方法・対応のポイントも解説

頭を抱える子ども
知的発達に遅れが見られる知的障害。そのなかでも軽度とされる軽度知的障害は知的障害全体のなかで約85%を占めるとも言われています。軽度知的障害は、見た目には全く分からない障害のため誤解されることも少なくありません。

今回は、軽度知的障害について「どのような障害なのか」「どのように対応するのがよいのか」など詳しく解説していきます。

軽度知的障害について

知的障害とは、知的な発達に問題があり認知、言語、運動、社会能力などの発達に困難を持つ状態を言います。知的障害の有病率は人口の約1%と言われていますが、症状が軽度であると判断される軽度知的障害者の割合は約85%というデータがあります。

知的障害のなかでも軽度知的障害者の割合は高く、社会生活を送るうえでさまざまな困難を抱えてしまうケースも少なくありません。

知的障害の定義

厚生労働省では、知的障害を以下のように定義しています。
知的機能の障害が発達期(おおむね18歳まで)にあらわれ、日常生活に支障が生じているため、何らかの特別の援助を必要とする状態にあるもの
参考:厚生労働省 知的障害児(者)基礎調査
知能だけでなく、障害によって日常生活への困難を持つ子どもを知的障害児と定義しています。知的障害は発達の過程で発見されることが多いことから、発達期であるおおむね18歳までにあらわれる障害として認知されているのが特徴です。

知的障害の重さはIQと生活能力で判定される

知的障害は知能検査の結果によって判定されると思われがちですが、実はそれだけではありません。厚生労働省の定義にもあるように、「日常生活に支障が生じている」という問題も知的障害の判定に深く関わっています。

日常生活をスムーズに送れるか、自分の身の回りのことを自分でできるか、他人とのコミュニケーションを取れるか、社会的なルールを理解できるかなど、日常生活能力を加味して判定されるのが一般的です。

このように知的障害は、知能検査の結果であるIQと生活能力などから「最重度」「重度」「中度」「軽度」に分類されます。

知的障害の分類

知的障害の分類は以下のとおりです。
【軽度知的障害】
IQ:50~69
・複雑でない時間管理が可能(〇分後に待ち合わせなど)
・日常的な買い物や銀行の利用ができる
・複雑でない内容であればコミックや小説などから人間関係の理解ができ筋書きが把握できる
・少人数間であればコミュニケーションが可能
・成人期においての精神年齢は概ね9歳から12歳相当といわれる
【中度知的障害】
IQ35~49
・〇分後の待ち合わせは難しいが、〇時〇分と時間を指定した待ち合わせは可能
・日常的な買い物はできるが、銀行関係(振込や引き落とし)などは難しい
・文章は読めるが部分的にしか理解や記憶ができないケースが多い
・1対1のコミュニケーションが可能
・成人期においての精神年齢は概ね6歳から9歳相当といわれる
【重度知的障害】
IQ:20~34
・時刻を読めても、時間管理は難しい
・限定された条件下で買い物が可能
・読んでいる文章から内容を理解するのが困難
・2~4語の指示が理解できる
・成人期においての精神年齢は概ね3歳から6歳相当といわれる
【最重度知的障害】
IQ:20以下
・時間によって行動をコントロールするのが困難
・自動販売機など極めて限定的な条件下で買い物が可能
・ストーリの理解が困難だが限定的に単語の理解が可能な場合がある
・本人の生活パターンを知る人とならコミュニケーションがとれるケースがある
・成人期においての精神年齢は概ね3歳未満といわれる
知的障害にはさまざまなケースがあり、個性や特性の現れ方も異なります。あくまで一例として参考にしてみてください。

軽度知的障害と発達障害の関係

軽度知的障害は大変な困難を持っているように見えますが、実際は就学児に学校での困り事が増えるまでは気付かれないことも多いようです。

一方で、見た目や行動か分かりにくいために、学業の不審なども「本人の努力不足」などと評されてしまうことがあり、軽度知的障害児は特にうつ病などの二次障害が起こりやすい傾向にあります。

これらの問題は発達障害にも言えることです。発達障害も軽度知的障害と同じく見た目には分かりづらい傾向にあります。自閉スペクトラム症やADHDなど、コミュニケーション能力に困難を持つため、適切な配慮を受けられないことで二次障害を起こす子どもも少なくありません。

これらの発達障害と軽度知的障害は併存率が比較的高いといわれています。軽度知的障害は発達障害と同じく、周囲の人からさまざまな誤解を受けやすい傾向にあります。そのため、できる限り早くから、適切な支援と繋がることが何よりも重要だといわれています。

学習障害と軽度知的障害との違い

発達障害のなかでも読み、書き、計算などの学習に困難を持つ限局性学習障害(SLD)。軽度知的障害と混同されがちですが、それぞれに違った障害です。

限局性学習障害は、読みや書き、計算など特定の分野にのみ限定的な困難を持つのに対し、軽度知的障害は学習全体に困難を持ちやすい傾向にあります。

軽度知的障害の特徴

発達期に発見されることの多い軽度知的障害ですが、年齢や時期などによって特徴が見られることもあります。続いては、軽度知的障害を持つ子どもに見られる特徴をみていきましょう。

幼児に見られる軽度知的障害の特徴

軽度知的障害児に多く見られる特徴として発語や言葉の理解に対する遅れがあります。同年代の幼児が発語しているのに対して、軽度知的障害児は発語がなかなか出にくかったり、2語文3語文の習得に遅れがでたりすることもあるようです。

しかし、言葉の発達は障害児、健常児問わず個人差が大きい傾向にあります。発語の有無や言葉の発達だけでは軽度知的障害の発見に繋げるのは難しいでしょう。

1歳半検診や3歳検診では言葉の発達に関する検査項目があります。必ず検診を受け、気になる点は医師や保健師などに相談してみるのがおすすめです。

就学児に見られる軽度知的障害の特徴

軽度知的障害の発見は就学児に多い傾向にあります。学校の勉強や集団生活におけるコミュニケーションに困難が見られるなど、発達の遅れによる困り事が徐々に増えていくケースが少なくありません。

具体的には、授業のスピードについていけず指示通りの行動ができない、読み書きや計算などをいくら練習しても習得できないといた例が見られます。また、コミュニケーションにおいては比喩や冗談を理解できなかったり、集団での会話に困難が見られたりするケースも少なくありません。

軽度知的障害の診断方法

軽度知的障害の診断は以下の医療機関で受けることができます。
  • 小児科
  • 児童精神科
  • 小児神経科
  • 発達外来
障害に関する専門的な知識や知能検査などへの知見も必要なため、病院によっては診断ができない場合もあります。事前に軽度知的障害に関する相談をしたいなど問い合わせをしておくとよいでしょう。

診断方法は問診と知能検査によって行われるのが一般的です。知能検査にはさまざまな種類があり、子供の年齢ごとに適した検査が行われます。知能検査は2~3歳から受けられるものもあり、ここで診断されたIQと日常生活の様子から軽度知的障害の有無を判断します。

軽度知的障害のボーダーラインとは

軽度知的障害者のIQは50~69とされており、平均的なIQは85~115と言われています。では、IQ70~85に当てはまる軽度知的障害ではないが、平均的な知能指数よりも低いIQを持つ人々はどうなるのでしょうか。

実は、このボーダーラインが近年問題視されています。IQ70~85に当てはまる範囲を境界知能と呼び、昔は「境界線精神遅延」として障害の一種と認定されていました。

境界知能に当てはまる人々は現在の基準では軽度知的障害に当てはまらないことから、支援の手が充分に行き届かないことが問題になっています。

また、境界知能に当てはまる人は知的障害者に多くみられる素直さや純朴性を持つ人も多いです。そのため、人に騙されやすく、流されるままに非行に走ってしまうケースも少なくありません。また、知的障害ではないために健常な人と同じ行動を求められ、挫折や失敗を繰り返すことで二次障害を発症してしまうケースもあります。

軽度知的障害の基準を満たしていなくとも、適切な配慮が求められる境界知能。その存在を多くの人が理解することが必要とされています。

軽度知的障害は治らないの?

軽度知的障害は、脳の働き方が健常な人とは異なる障害であるため、治ることはありません。しかし、自分の障害と上手く付き合う方法を学び、スムーズに日常生活を過ごしている人も多くいます。

そこで重要視されているのが療育です。療育を通して、自分の障害や特性とどう付き合っていくべきなのかを学ぶことで、軽度知的障害による社会的不利を補うことができます。また、療育を始めとする支援機関との繋がりを持つことで、家族を始めとする周囲の人々も軽度知的障害についての理解や配慮について学ぶことができるでしょう。

軽度知的障害の子供に対応する際のポイント

軽度知的障害児に接する際、周囲の人には合理的配慮が求められます。しかし、合理的配慮と言われても「何をすればいいのだろう?」と悩む人もいるでしょう。

最後に、軽度知的障害児に接する際、周囲の人が気を付けたいポイントについて紹介します。

具体的に指示する

軽度知的障害児のなかには、比喩や抽象的な言葉の理解に困難を持つケースが多くみられます。「できる所まででいいよ」「なるべく早くやってね」など、曖昧な表現を理解できないケースが多いです。

「できる所ってどこまで?できないけどどうすればいい?」「なるべくってなん分くらい?早くっていつまで?」など、抽象的な言葉が理解できず混乱してしまいます。

軽度知的障害児に指示を出す際には、子供が何をすればいいのか明確に理解できるよう指示に具体性を持たせましょう。「〇ページまでしてね」「〇分までにしてね。〇分になったら作業を終えてね」など、ハッキリとしたゴールを示してあげることが大切です。

ITツールを使って困り事を解消する

軽度知的障害を持っていると聞くと、周囲の大人は「難しいことや複雑なことはできない」と思いがちです。しかし、現代のITテクノロジーを駆使すれば、軽度知的障害による困り事を解消できることも少なくありません。

現代のITツールは大変便利で操作も簡単なものが多いです。作業の順番を把握できるようTODOリストなどのアプリを利用するのもよいでしょう。指示を忘れやすい子どもにはリマインドアプリや、時間管理のためにアラームアプリを利用するのもおすすめです。

就学にあたり、先生の話を聞きながら板書を取ることが難しい場合には、板書はタブレットで黒板を撮影し、話を聞くことに集中するのもよいでしょう。便利に使えるものを子供の特性に合わせて活用することが大切です。

スモールステップを意識する

軽度知的障害児の中には、一度にたくさんの情報を処理することが苦手なケースも多くみられます。そのため、一度にたくさんの指示を出してしまうと混乱してしまう可能性が高いです。

そこで、軽度知的障害児には何事もスモールステップのゴール設定をする方法は有効と言われています。

小さなゴールをたくさん用意して、着実にクリアしていくことが大切です。つまずいてしまう場合には、さらに小さなゴールを設定し、説明の仕方や方法を工夫してみましょう。

軽度知的障害の子供には合理的な配慮が必要

知的障害のなかでも軽度に分類される軽度知的障害。日常生活や学業、コミュニケーションに困難を持つこともありますが、周囲の人が合理的に配慮することで出来ることも多くあります。

どのように接すれば、軽度知的障害児がスムーズに生活を送れるのか理解するためにも、どのような障害なのかを知ってみてください。

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