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注意欠陥・多動性障害(ADHD)ってどんな障害?特徴や診断方法・対応のポイントも解説

療育手帳
「忘れっぽい」「すぐに気が散ってしまう」「考えるよりも先に行動してしまう」
子どもに多くみられるこれらの特徴が障害としてあらわれる注意欠陥・多動性障害(ADHD)をご存知でしょうか。

これらの特徴は性格や教育が関係していると思われがちですが、注意欠陥・多動性障害の子供達は脳の働きによって不注意や衝動性・多動性などの困り事が起こってしまいます。脳の働きに原因があるということは、本人の努力だけでは改善が難しいということです。

今回は、注意欠陥・多動性障害について詳しく解説します。注意欠陥・多動性障害について詳しく知りたい人はぜひ参考にしてみてください。

尚、注意欠陥・多動性障害はDSM(精神障害の診断と統計マニュアル)によって2013年より「注意欠如・多動性障害(または注意欠如・多動症)」と表記されるようになりましたが、当記事では従来の知名度が未だ高いため注意欠陥・多動性障害と表記しています。

注意欠陥・多動性障害(ADHD)とは

注意欠陥・多動性障害とは、脳の働きによって不注意や多動性・衝動性などの特性がみられる障害です。英名であるattention deficit hyperactivity disorderの頭文字をとってADHDと呼ばれることもあります。

2013年より注意欠如・多動性障害(もしくは注意欠如・多動症)と表記名が変更されました。そもそも、子供にとって不注意や衝動性・多動性は一般的な行動であるため、これまでは「忘れっぽい子ども」「約束を守れない子供」「落ち着きのない子」などと評されてきたケースも少なくありません。

障害が認められないまま大人になり、社会で困難を抱えている「大人のADHD」という言葉も近年広く認知されるようになりました。

注意欠陥・多動性障害は発達障害の一種

注意欠陥・多動性障害は発達障害の一種で、脳の働き方が原因ではないかと考えられています。近年の研究によると、物事を理論的に考える機能を持つ前頭葉の働き方が原因となっているのはないかという説もあります。

発達障害は注意欠陥・多動性障害、自閉スペクトラム障害、限局性学習障害、その他脳機能障害を指していますが、特に注意欠陥・多動性障害の割合は大きいと考えられています。子どもの有病率の割合は3~7%、大人においても2.5%という比較的高い割合です。

注意欠陥・多動性障害は他の障害と併存するケースもある

注意欠陥・多動性障害は特に他の障害との併存率の高さが注目されています。
なかでも以下の障害や病気との併存が多くみられます。
  • 自閉スペクトラム症
  • 限局性学習障害
  • チック症(トゥレット症候群)
  • 吃音症
  • うつ病
  • 双極性障害
  • 不安症など
注意欠陥・多動性障害は、周囲の合理的な配慮があれば健常な人と殆ど変わらない生活を送ることができます。一方で、障害による困り事を「努力不足」「配慮が足りない」「荒っぽい性格」など、人間性によるものだと評されてしまうケースが少なくありません。自分自身でも、どうして物忘れをしてしまうのか、衝動的に行動してしまうのか理解できないことから、自己否定に陥り二次障害として不安症やうつ病などを発症するケースも多いです。

注意欠陥・多動性障害の3つの分類と代表的な症状

注意欠陥・多動性障害は、全ての人が不注意や多動性、衝動性を持っている訳ではなく、症状の現れ方には個人差があります。そこで、症状の現れ方によって「不注意優勢に存在」「多動・衝動性に存在」「混合して存在」の3つに分類されるのが特徴です。

1.不注意優勢に存在

不注意優勢型の注意欠陥・多動性障害は、不注意の特性が強くあらわれる一方、衝動性や多動性についてはあまり特性がみられません。不注意は健常な人にも見られることが多く、障害を見過ごされやすいのも不注意優勢型に多いです。

しかし、注意欠陥・多動性障害の場合、「忘れ物をしないように、玄関に荷物を置いておこう」などの改善策を立てても、玄関先においてある荷物をそのまま忘れてしまうようなケースが見られ、健常な人の「物忘れ」とは違った困難があります。

不注意優勢に存在している注意欠陥・多動性障害の代表的な症状には以下のようなものがあります。
  • 忘れ物が多い
  • 約束を忘れてしまう
  • 集中し続けることが苦手
  • 物事を順序だてて行うのが苦手
  • よく物を無くす
不注意優勢型注意欠陥・多動性障害の子供には、学校の準備物で忘れ物が多い、窓の外を飛ぶ鳥などに気を取られて授業に集中できない、などの困り事が多く見られます。

2.多動・衝動性に存在

多動・衝動性優勢型の注意欠陥・多動性障害は、多動性や衝動性の特徴が強くあらわれる一方、不注意についてはあまり特性がみられません。
多動性はじっとしていると落ち着かなかったり、無意識に体を動かしてしまう特性で、衝動性は感情および欲求の制御に困難があり考えるよりも先に行動してしまったりする特性です。

多動・衝動性に存在している注意欠陥・多動性障害の代表的な症状には以下のようなものがあります。
  • 貧乏ゆすりをやめられない(多動性)
  • 常に何かを触っていたり手や足を動かしたりしてしまう(多動性)
  • 一方的に自分の話をしてしまう(衝動性)
  • 自分の希望通りにならないと大声で怒鳴ったり、物や人に攻撃したりしまうことがある(衝動性)
  • 考えるよりも先に体が動いてしまう(衝動性)
多動・衝動性優勢型の注意欠陥・多動性障害の子供には、授業中じっと座っていられない、自分の思い通りにいかないと酷く癇癪を起してしまうなどの困り事が多くみられます。

3.混合して存在

混合型の注意欠陥・多動性障害は、不注意・衝動性・多動性それぞれの特性があらわれます。どの特性が強いのかは個人差が大きいです。

注意欠陥・多動性障害のセルフチェック

自分の子供や周囲の人に、不注意や衝動性・多動性が見られた場合には、以下のセルフチェックをしてみてください。
  • 不注意や多動・衝動性が同年代の子供に比べて強くみられる
  • 12歳以前より症状が複数みられる
  • 家庭、学校、その他の活動中など2つ以上の場所で不注意もしくは多動・衝動性による困り事がある
  • 不注意や多動・衝動性による特性で対人関係や学的機能が障害されている
  • 問題となる症状が、他の精神病性障害や精神疾患に由来されているものではない
これらはDSM-5(精神疾患の診断・統計マニュアル)に記載されている注意欠陥・多動性障害の診断基準です。全ての基準を満たしている場合、注意欠陥・多動性障害と診断されるケースが高いと言えるでしょう。

ただし、確定診断は専門医によって注意深く行われます。注意欠陥・多動性障害に似た特性は神経疾患や環境が由来して起こるケースもあるため、気になる場合には必ず医療機関を受診したり相談支援を受けたりすることを検討してください。

注意欠陥・多動性障害の診断方法

注意欠陥・多動性障害の診断は以下の医療機関で受けられます。
  • 精神科
  • 神経科
  • 心療内科
  • 発達外来
診断の際には、主に問診や検査などを行います。しかし、一時的な検査や問診だけでは正しく障害の有無を判断できません。長期的に行動を観察して診断が下るケースが多いようです。

注意欠陥・多動性障害の治療方法

注意欠陥・多動性障害は病気ではなく障害です。そのため、根治のための治療方法はありません。しかし、「環境設定」「療育」「薬物治療」などを通して、障害と共存していくことができます。

環境設定

注意欠陥・多動性障害は、特性の現れ方や強さによって適した環境設定が求められます。

例えば、小学校に通っている不注意優勢型の注意欠陥・多動性障害児の場合、できる限り授業に集中できるよう窓からの景色が見えない席にしたり、パーテーションで視界を遮り不注意を招く情報を遮断したりする方法も有効です。

多動・衝動性優勢型の注意欠陥・多動性障害児の場合、授業時間を短く区切って多動性を開放できる時間をこまめに与える方法も選ばれています。

このように、注意欠陥・多動性障害は周囲の合理的配慮による環境設定で困り事を減らすことができます。

療育

療育では、特性に合わせた発達支援を行います。療育施設は、自分自身の特性を理解したうえで、どのように日常生活や他人とのコミュニケーションをとるのがいいのか学んでいく場所です。

児童指導員や保育士、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、心理士、児童発達支援管理責任者などの専門知識をもつスタッフが障害児の発達支援を行います。

また、療育施設は子どもの発達支援だけでなく、障害児の家族や周囲の人などの支援を行うことも運営目的のひとつです。障害についての理解をフォローしたり、障害児とどのように関わればよいのかなど、保護者を対象としたペアレントトレーニングを行ったりしている施設もあります。

薬物療法

注意欠陥・多動性障害は脳内の神経伝達物質をコントロールする薬を使って、特性を抑制することもできます。しかし、薬には副作用などもあるため、誰もが薬物療法を選択できるわけではありません。特に子供の場合は、発達途中ということで環境設定や療育を優先させて行うケースが多いでしょう。

注意欠陥・多動性障害の子供に対応するときのポイント

注意欠陥・多動性障害の子供と対応する際には、以下のポイントに配慮してみてください。

発達障害について理解する

目には見えない発達障害は、特に周囲から誤解を受けやすい傾向にあります。例えば、生まれつき目の見えない人に本を読みなさいとは言いませんよね。それでも、本を読めるように点字本を使用したり、朗読して本の内容を伝えたりする配慮を周囲は自然に行います。

しかし、発達障害に関しては目には見えないというだけで「あなたの注意力不足」「きちんと理解していればじっとしていられる筈」など、特性による行動を精神論で解決するよう求められることが少なくありません。

注意欠陥・多動性障害は脳の働きが生まれつき健常な人とは異なります。生まれつき目が見えない人が目から情報を得られないように、生まれつき脳の働きが異なるため不注意や多動性、衝動性の特性があらわれてしまうのです。

注意欠陥・多動性障害をはじめとする発達障害児に対応する周囲の人は、最初に障害についての理解を深めることが必要です。

できることを沢山褒める

不注意や衝動性・多動性によって、障害児にはできないことや不得意なことが多いでしょう。しかし、それらは障害が起因しているため療育によって和らげることはできても不得意を得意に変えることは難しいです。

注意欠陥・多動性障害児に限らず、人はできない事や超えるべき壁にぶつかり続けられるほど強くはありません。最初は克服してやる!とやる気に満ちていても、何度も挫折してしまうと自己肯定感の欠如に繋がってしまうでしょう。

注意欠陥・多動性障害児に対応する際は、できていること・子どもの得意とすることを褒めて伸ばすことが大切です。できないことが多く、乗り越えなければいけない壁が多い子どもが「こんなに褒めて貰える自分ならきっと何とかできる筈」と思える自信を付けてあげましょう。

成功体験を見重ねられる助言をする

注意欠陥・多動性障害児の中には衝動性が強く、自分の思い通りにできないことに癇癪を起してしまう子どもも少なくありません。特に、できないことや失敗にぶつかってしまうと、悲しさや悔しさなどの衝動性が爆発してしまうこともあるでしょう。

注意欠陥・多動性障害児に対応する際には、成功体験を積み重ねられるよう周囲の人が適切な助言をすることが重要です。

不注意が出やすい子どもには「集中できるように机の上のものを片付けてから課題に取り組もう」と声をかけるなど、成功をサポ―トする声掛けをしましょう。

多動性を開放できる時間を設ける

多動性の特性が出やすい子どもの場合、特性を抑え付けるだけではストレスを蓄積して失敗を招いてしまう原因になります。多動性の特性を持つ子どもは、自分の意思に関係なく体が動いてしまうことを周囲が理解してください。

どうしても静止を求められるシーンでは、小休憩を挟んで多動性を開放できる時間を設けることが大切です。勉強などで机にじっと座っていなければいけない場合には、時間設定を短くして、小まめに体を動かせる時間を作りましょう。

注意欠陥・多動性障害は合理的配慮でうまく付き合っていける障害

注意欠陥・多動性障害は不注意や衝動性、多動性などの特性によって困難を抱えてしまう障害です。しかし、周囲の人が深く理解し合理的に配慮することで、障害を抱えながらうまく日常生活を送っていくことができます。

完治ができない障害だからこそ、本人と周囲が障害との付き合い方を理解して過ごしていくことが大切です。まずは、注意欠陥・多動性障害がどのような障害なのか、どのような特性を持つのかを理解することから始めてみてはいかがでしょうか。

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