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HSP・HSCってどんなもの?発達障害との違いや特徴・セルフチェック方法・対処法なども紹介

HSPの文字
「繊細さん」という言葉を聞いたことがありますか?近年、HSP・HSCについての認知が広がるなかで、メディアではキャッチーなフレーズで紹介されることも増えました。

一方で、名前だけが一人歩きをしてしまい、HSPやHSCについて正しい知識が伝わっていないケースも少なくありません。特に、似ている部分の多い発達障害との関連性については誤った認識を持っている人も多いのが現状です。

今回はHSP・HSCがどのような特性なのか、分かりやすく紹介します。合わせて、発達障害との違いや似ているところなど、HSP・HSCについて詳しく解説しているので、参考にしてみてください。

HSP・HSCとは

HSPとは、Highly Sensitive Personの頭文字をとった略語です。日本語に訳すと「非常に繊細な人」という意味を持っています。

1996年に出版された「Highly Sensitive Person」(著:エレイン・アーロン)という書籍によって広く知られるようになった言葉で、医学的用語ではなく、心理学者による心理学的な定義です。

大人の場合はHSPが用いられますが、子どもの場合はHSC(Highly Sensitive Child)と呼ばれます。

HSPは病気?障害?

HSPおよびHSCで最も大きな誤解が、病気もしくは障害であるという認識です。前述したように、HSP(HSC)は、医学的用語ではなく心理学による繊細な感受性を持つ人々を表すための定義に過ぎません。

HSP(HSC)は病気でも障害でもなく、その人の生まれ持った感受性や生理的な反応の強さ、性格、気質による特性です。

5人に1人はHSP

HSP(HSC)は非常にありふれた特性です。次項で紹介する「HSPの特徴」を知れば、自分も当てはまると感じる人が多いでしょう。
エレイン・アーロン氏の著書「Highly Sensitive Person」では、人口統計におけるHSPの割合は15~20%と紹介されています。また、2020年に発表された論文でも、HSPの割合についてほぼ同様の結果が発表されています。

つまり、全人口の5人に1人はHSP(HSC)の特性を持っているということです。HSPは特別な病気や症状でもなく、比較的ありふれた特性であると言えるでしょう。

特別なものではないからこそ、関わる人はHSPへの理解を持って合理的に配慮することも時には必要です。

HSP(HSC)に見られる4つの特徴

HSP(HSC)は以下の4つの特徴から定義付けられます。
  • Depth of processing(情報処理能力の深さ)
  • Overstimulation(刺激を受けやすい)
  • Emotional response and empathy(感情的になりやすく共感力が強い)
  • Sensitivity to subtleties(些細なことに対する敏感性)
HSPのこれらの特徴の頭文字をとって「DOES」と呼びます。続いて、DOESについて詳しくみていきましょう。

特徴1.情報処理能力の深さ - Depth of processing -

HSPの大きな特徴として、1つの物事から多くの情報を読み取ることが挙げられます。その場の空気、相手の感情など小さな情報を深く考えすぎるために疲れてしまったり、考えがまとまらず行動に起こすことを躊躇ったりすることもあるでしょう。

しかし、この点はネガティブな面だけではありません。Depth of processingの特徴が強く現れる人は、調べものなどをすると細やかな情報まできっちりと調べ上げる傾向にあります。また、多角的な視野で物事を考えるため、お世辞などの嘘を見抜くのが得意です。

特徴2.刺激を過剰に受ける- Overstimulation –

触覚、嗅覚、味覚、視覚、聴覚など、通常は適切な感受量を能動的に調整している五感に対して、過剰に反応してしまう特徴がOverstimulation(刺激を受けやすい)です。

感覚過敏に似ている面もありますが、感受性に違いが見られるケースが少なくありません
。たとえば、聴覚過敏の人は、聴覚で感じ取る音の刺激全てを過剰に受け取ってしまうのに対し、HSPのOverstimulationの場合は、人の話し声だけが耳に入り、その内容について深く考えこんでしまうなどDepth of processingと併存した特徴がみられることが多いです。

特徴3. 感情的になりやすく共感力が強い-Emotional response and empathy-

非常に共感力が強く、相手の気持ちを察することができるのもHSPの特徴のひとつです。共感力は人間に対してだけでなく、小説やドラマなどの登場人物に共感し、感情が高ぶりやすい人も少なくありません。

人の仕草、目線、表情、前後の行動など、さまざまな情報から相手の感情を読み取ることを得意とする人も多いです。一方、相手の感情がよく分かるからこそ、自分の意見を言えずに遠慮しストレスを溜めてしまう人もしばしば見られます。

特徴4.些細なことに対する敏感性 - Sensitivity to subtleties –

爪が少しでも伸びてしまうと気になって集中できない、家電の発する微かなモーター音が気になるなど、些細なことに対する敏感性もHSPの特徴です。Overstimulation(刺激を過剰に受ける)とよく似ていますが、Sensitivity to subtletiesは刺激に対する敏感性ではなく、自分自身のこだわりに対する敏感性をあらわします。

タバコの煙が苦手で、ほんの僅かでもタバコの臭いがすると気分が悪くなってしまうなど、こだわりに対する刺激への敏感性が目立ちます。

HSP(HSC)の簡易セルフチェック

以下は、HSP(HSC)に多く見られる特徴です。当てはまるものが多い程HSP(HSC)である可能性が高いでしょう。
  • 環境の変化に敏感である
  • 他人の気分によって行動や言動を変えてしまう
  • 痛みに敏感である
  • カフェインの影響を受けやすい
  • 想像力が豊かである
  • ささいなことでも驚きやすい
  • 芸術(美術や音楽など)に対して強い感動を覚えやすい
  • マルチタスクを抱えるとパニックになってしまう
  • 良心的だと言われたことがある
  • 刺激(音、光、触感など)に敏感である
  • 自分のキャパシティを超えると、1人きりになりたくなる
  • 暴力的な内容や残酷な内容の映画やテレビ番組、ニュースなどを見ると気持ちが酷く落ち込む
  • 他人の視線が気になり、見られていると実力を発揮できなくなる
  • 子どもの頃、自分に関わる親や教師などに「内気」「繊細」などと言われたことがある
これらは、あくまでHSP(HSC)に多くみられる特性です。全てに当てはまるからといってHSP(HSC)と断定できる訳ではありませんが、繊細な感受性を持ち合わせているという指標にはなりやすいでしょう。

HSP(HSC)と発達障害の関係性

HSP (HSC)は発達障害と似ている部分が多く、混同されがちです。しかし、HSP (HSC)は病気でも障害でもないため、発達障害とは異なると言えるでしょう。異なる部分と似ている部分を詳しく紹介したうえで、HSP (HSC)と発達障害の関係性を解説します。

HSPと発達障害の違い

発達障害とは、生まれつき脳機能が健常な人と異なる障害です。情報の伝わり方が違うことで、受け取り方も異なるため、日常生活やコミュニケーションなどさまざまな面で影響があります。

一方、HSP(HSC)は脳機能に問題がある訳ではありませんが、情報の受け皿が一般的なものよりも大きい状態と言えるでしょう。必要以上に情報を受け取ってしまうため、脳内での処理が追い付かず疲弊してしまったり困り事が起こったりすることもあります。

発達障害は障害として認められており、公的な支援を受けられるケースが多いのに対して、HSP(HSC)は病気や障害ではないため、適切な支援に繋がりにくいのも大きな違いです。

HSP(HSC)と発達障害の似ている点

発達障害のなかでも、自閉スペクトラム症(ASD)と注意欠如・多動症(ADHD)は特に似ている点が多くあると言われています。

HSP(HSC)、ASDともに対人関係に困難を持っているケースが多く見られ、1人で居ることを好みやすい傾向にあります。また、環境の変化に敏感で些細な変化にも強いストレスを感じてしまうところも似ている点です。しかし、HSPは他人に対して強い繊細性を持つのに対し、ASDは他人への興味が薄い点は明確な違いと言えるでしょう。

ADHDも感覚刺激に対する敏感性がHSPと似ていると言われています。特にADHDは些細な刺激によって注意力が散漫になってしまいやすいですが、HSP(HSC)は注意力が比較的高く、衝動性は見られません。

HSP (HSC)と発達障害は併発する?

HSP (HSC)も発達障害も先天的なものなので、HSP (HSC)として生まれた人が後発的に発達障害を発症したり、発達障害として生まれた人が後天的にHSP (HSC)になったりするといったことはありません。

しかし、先天的に2つの要素を兼ね備えて生まれてくるケースは存在します。

ASDの診断を受けているものの比較的他人への関心があるケースや、ADHDの診断を受けているものの衝動性が少ないケースなど、HSP (HSC)の繊細さが働いていることがあります。一方で、HSP (HSC)を併せ持つからこそ過剰に刺激に反応してしまうなど、併発することでメリット・デメリット両方があります。

HSP (HSC)は診断を受けられる?

HSP(HSC)という言葉が広まったことで、多くの人が「自分もHSP (HSC)かもしれない」と考えたことでしょう。しかし、HSP (HSC)はあくまで心理学的に繊細な人を分類するための定義です。

病気や障害ではないうえ、どこからどこまでがHSP (HSC)であるという明確な基準がないため、確定診断を行うことは難しいでしょう。

HSP(HSC)は潜在的に病気・障害のリスクを抱えやすい

HSP(HSC)に当てはまる気質を持つ人の多くは、自分自身がHSP(HSC)である自覚など持っていないことが多いでしょう。さまざまな刺激や周囲の感情などに振り回され、疲弊しつつも「皆同じことを経験している筈」と耐えている人も少なくありません。その結果、自分のキャパシティを超えてしまい、うつ病や統合失調症、睡眠障害、パニック障害などを引き起こすケースも多く存在します。

HSP(HSC)は周囲の人に気付かれにくく、尚且つ自分でも気づきにくいものです。しかし、統計上5人に1人はHSP(HSC)と言われるほどありふれている気質でもあります。自分が繊細さを持っていることを自覚し、生きやすくする工夫を行うことも必要でしょう。

HSP(HSC)の対処方法

自分自身がHSPであったり、自分の子供がHSCであったりする場合、どのような対処方法をとればいいのか悩む人は少なくありません。

自分に合った対処方法を見つけて日々の困り事を減らしていくのが望ましいでしょう。

対処方法その1.情報(刺激)を抑制する

HSP(HSC)は、情報過多から生じる気質と言えます。そのため、まずは情報を抑制する対処方法が望ましいでしょう。情報を抑制するには以下の方法があります。
  • イヤーマフや耳栓などで聴覚に対する刺激を抑制する
  • サングラスや度数の低いメガネなどで視覚からの情報や刺激を抑制する
  • マスクを装着して嗅覚による情報や刺激を抑制する
  • 極端に辛いものや酸っぱいものなどを避けて味覚による刺激を抑制する
HSP(HSC)と言っても、全ての刺激に対して敏感である訳ではありません。自分にとって最もストレスとなる刺激が何なのかを把握していき、上手く避ける手段を身に付けることが大切です。

対処方法その2.繊細さの根源にHSP(HSC)があることを理解する

人一倍繊細な自分の気質に悩んでいる人や自己肯定感が下がってしまっている人の場合は、根源にHSP(HSC)があることを自認するのがよいでしょう。

特に、他人の機嫌を伺ってしまう人の場合は、気持ちの持ちようや考え方などの精神論によって追いつめられるケースが多いです。HSP(HSC)による繊細さが起因していると理解することで、情報感受性の強さによって他人に共感してしまう、など自分自身を客観的に見ることができるようになるでしょう。

他人に共感した時にも「HSP(HSC)によって過剰に共感していないか」と客観視できることで、ストレスとなりそうな人とは距離を置いたりすることもできるようになります。

HSPやHSCの人に接するときのポイント

周囲にHSPやHSCの人がいる場合、周囲の人は本人の意思を訪ねてみるのがよいでしょう。HSP・HSCといっても、どのような繊細さを持つのかは人それぞれです。

HSPやHSCがどのような気持ちでいるのかを想像し、どのような配慮をすれば過ごしやすくなるのかを一緒に考えてみてください。

HSP(HSC)と発達障害は似ているようで違う

さまざまな刺激を敏感に受け取ってしまうHSP(HSC)と発達障害は似通った部分も多く混同してしまう人も多いでしょう。しかし、発達障害とは原因となる部分が異なり、対処方法も大きく変わってきます。

それぞれの違いをよく理解し、困難や生きづらさを低減していけるよう、本人や周囲の人がHSP(HSC)や発達障害に関する知識を深めていくことが大切です。

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