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発達障害は遺伝する?兄弟間・親子間の確率など気になる疑問を分かりやすく解説

遺伝
発達障害は年々、診断数が増えているものの、未だ原因が解明されていない先天性の障害です。未知の部分が多いために、さまざまな誤解を受けているケースも少なくありません。

そのなかでも特に憶測が語られたり誤解されたりしやすいのが発達障害と遺伝の関係性です。近年の最新研究では、発達障害と遺伝の関係性についてさまざまな新事実が解明されています。

今回は、最新研究の内容とともに、発達障害と遺伝の関係性について分かりやすく紹介します。

発達障害とは

発達障害は発達障害者支援法において以下のように定義されています。
"自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるもの"
引用元:文部科学省
発達障害は大きく4つに分けることができます。
  • 自閉スペクトラム障害(ASD)
  • 注意欠如・多動性障害(ADHD)
  • 限局性学習障害(SLD)
  • その他の障害
これらの障害は必ずしも単独でみられる訳ではなく、複数の障害を併発していたり知的障害を伴ったりすることもあります。

障害によって引き起こされる特性が、さまざまな困り事を起こすケースも少なくありません。そこで、発達障害者が生きづらさを感じにくくなるよう、さまざまな支援が必要と考えられています。

発達障害の原因は?なぜ生まれるの?

発達障害は、脳の機能に生まれつき障害があることで発症することが分かっています。しかし、なぜ脳の機能に障害が現れるのか等、発達障害の原因については未解明です。先天性の脳機能障害と簡単に説明できるものではなく、遺伝要因にさまざまな要素が複雑に絡み合って発症しているのではないかという説が、現代医学ではもっとも有力とされています。

ひとつだけハッキリ言えるのは、発達障害は親の愛情不足や躾、教育などによって直接的に引き起こされているものではないということです。発達障害について未解明な部分が多い一方、原因が脳機能にあることは医学的に明言されています。

発達障害に遺伝子は関係ある?

発達障害と遺伝子は密接に関係しています。しかし、関連性のある遺伝子は無数にあるため、原因として特定するには至っていません。発達障害のなかでも世界的に発症数の多い自閉スペクトラム症については、いくつかの遺伝子の関連性が報告されていますが、それすらも環境要因と複雑に絡みあっていて完全に特定されている訳ではないのです。

また、発達障害による特性を引き起こす遺伝子は殆どの人が先天的に持ち合わせているものであるという説もあります。例えば、注意欠如・多動性障害などにみられる衝動性は多くの幼児に見られる特性です。しかし、健常児の場合は成長していくなかで衝動性が抑えられ社会に調和していくようになります。

注意欠如・多動性障害の場合、特性が抑えられないために社会生活において困り事が発生してしまうと言えるでしょう。このように、発達障害に関連する遺伝子は「持っている」「持っていない」という振り分けではなく、「特性が強い」「特性が弱い」という考え方もあります。

発達障害は遺伝する可能性がある?

親が発達障害を持っていたり、既に発達障害の子供がいたりする場合、新しく生まれてくる子供にも発達障害が遺伝するのか気になる人もいるでしょう。

発達障害の親から発達障害児が産まれるケースや、兄弟全員が発達障害児であるケースは存在します。一方で、親が健常にも関らず子供に発達障害が見られるケースや、複数の兄弟のうち1人だけが発達障害を発症するケースも少なくありません。

発達障害には遺伝子が関係していると考えられるものの、遺伝子以外の要因による影響もあるため「絶対に遺伝する」とも「絶対に遺伝しない」とも言えないでしょう。

発達障害は多因子遺伝疾患と推測する説もあります。多因子遺伝子疾患とは、単一の遺伝子が原因として見られる遺伝子疾患ではないものの、血縁者による発症率の高い疾患です。多因子遺伝疾患には、口唇口蓋裂や先天性奇形などの障害の他、糖尿病や高血圧なども含まれます。

発達障害が遺伝する確率とは

発達障害の遺伝について解説しましたが、実際は「生まれてみないと分からない」ということしか言えないでしょう。しかし、発達障害について多方面から原因を解明するために世界中でさまざまな研究が進められています。

続いては、そんな研究のなかから統計をとって発表されている発達障害の遺伝する確率についてみていきましょう。

親から子供に発達障害が遺伝する確率

発達障害を持つ親から発達障害児が誕生する確率は、現在分かっていません。さまざまな研究のなかでも親から子供への発達障害の遺伝については、有効な数値を算出できていないようです。

兄弟から発達障害が遺伝する確率

兄弟間については、自閉スペクトラム障害の遺伝性において以下のような研究結果が報告されています。
  • 一卵性双生児で自閉スペクトラム障害の兄弟がいて、もう1人も発達障害を発症する確率は77%
  • 二卵性双生児で自閉スペクトラム障害の兄弟がいて、もう1人も発達障害を発症する確率は31%
  • 自閉スペクトラム障害の兄弟がいて、もう1人も発達障害を発症する確率は20%
これらはアメリカの研究者が発表しています。
一卵性双生児の場合、2人とも発達障害を発症する確率は70%台と高く見えますが、一方で遺伝子が全く同じ一卵性双生児でも100%2人ともに発達障害が発症する訳ではありません。これによって、遺伝子だけが発達障害を引き起こしている訳ではないということがわかります。
参考資料:自閉症―わかっていること(と、まだわかっていないこと)

発達障害の遺伝に関する父親と母親の影響とは

発達障害には、遺伝的要因と環境的要因が複雑に絡み合っていると推測されています。そのなかで、父親や母親の持つ要因についてもいくつかの可能性が示唆されています。

父親からの影響

アメリカの研究者ウェンディ・チャン氏は、受胎時に父親が高齢である場合、自閉スペクトラム障害の発症リスクが高まると警告しています。また、スウェーデンの研究チームは50歳以上で父親になった人は、20代前半で父親になった人と比較すると孫が自閉スペクトラム障害を発生するリスクが1.7~1.8倍だという研究報告もあります。
参考:自閉症-分かっていること(と、まだ分かっていないこと) 参考:世代間の自閉症リスク

母親からの影響

妊娠中に母親がバルプロ酸を服用すると、生まれてくる子供が自閉スペクトラム障害を発症するリスクが5倍になるという研究報告があります。バルプロ酸は抗てんかん薬として用いられる薬剤で、てんかんの他に偏頭痛や躁状態の改善などにも選ばれる薬剤です。

日本でも、大阪大学の研究チームが自閉症の発祥とバルプロ酸の関係性についての研究を行っており、マウスを使った実験では抗てんかん薬を妊娠中のマウスに投与することで自閉症のモデルマウスが誕生しています。
参考:バルプロ酸の胎内曝露による自閉症の病態分子基盤解明

発達障害はさまざまな要因が複雑に絡み合って発症している

現在の最新の研究では、以下のことがらが発達障害の発生要因として挙げられています。
  • 遺伝子
  • 受胎時の親の年齢
  • 妊娠中の公害・汚染・薬剤による影響
  • 妊娠中の食事
  • 出産時に起きた合併症
さまざまなことがらが複雑に絡みあって発達障害を引き起こすのではないかと考えられ、現在でも科学的にこれらの事象を解明できるよう研究が続けられています。

発達障害と遺伝の関係性はまだ分からないことだらけ

発達障害と遺伝の関係性について、最新の研究結果を交えて紹介してきました。発達障害は人類にとってまだまだ未知の部分が多い障害です。どうして発症するのか、何が引き金となって発症しているのか、治療法は確立できるのかなど分からないことばかりと言えるでしょう。

しかし、医学と脳科学は一歩一歩前進しています。ひと昔前は「扱いにくい子」「育てにくい子」と呼ばれた子供達に「発達障害」という診断がついて、「療育」という支援に繋がる仕組みができています。

今後も発達障害に関するさまざまな事柄が解明されていくことでしょう。いつか発達障害について全貌が解明されるその日まで、発達障害を持つ子ども達が心地よく過ごせるよう支援の輪を広げていくことが求められます。

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