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場面緘黙症ってどんな症状?原因や症状・治療方法なども解説【セルフチェックも紹介】

口を開ける子ども
家では家族と何の問題もなく会話ができるのに、特定の場所にいくと途端に言葉がでなくなってしまう場面緘黙(かんもく)症という症状をご存知でしょうか?

「内気な性格」「人見知り」などと勘違いされやすい場面緘黙症は、適切な治療や支援を必要とすることもある発達障害の一種です。

今回は、そんな場面緘黙症について、症状や原因、治療方法などを解説します。ASDやADHDなどよりもさらに知名度の低い、場面緘黙症についてぜひ知ってください。

場面緘黙症とは

場面緘黙症とは、決まった場所で言葉が離せなくなってしまう症状です。場所は、学校や職場など、家庭以外の場所であるケースが多い傾向にあります。

緘黙(かんもく)とは、口を閉じて何も言わない様や押し黙る様子を表す言葉です。その言葉の意味通り、場面緘黙症の患者は家庭やそれ以外の場所では通常通りに会話もできるのに、特定の場所でだけ話せなくなるのが特徴と言えます。

場所に限らず話せなくなる場合は、全緘黙やその他の精神疾患(失語症など)に分類されます。

家では普通に話せることから、人見知りや場所見知りなど性格に起因していると勘違いされやすく、誤解を受けやすい精神疾患です。

場面緘黙症は発達障害のひとつ

自閉スペクトラム障害(ASD)や注意欠如・多動性障害(ADHD)など、近年認知が広まりつつある発達障害。場面緘黙症も、厚生労働省では発達障害の一種であること認めています。

場面緘黙は発達障害者支援法において定められている「その他のこれに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するもの」に分類される症状です。

他の発達障害同様に、周囲の配慮が必要であるにも関わらず、見た目にはまったく障害を持っていることが分からないため、場面緘黙症についても他の障害同様、社会的な周知・理解を広めることが求められています。

場面緘黙症の原因

場面緘黙症の原因は、未だ全てが解明されている訳ではありません。しかし、有力ではないかと考えられている説は存在します。
現在、可能性が高いと考えられている発症要因は、生物学的な気質と心理的な要因です。場面緘黙症を発症する子どもの多くに「不安になりやすい気質」のようなものが見られます。この「不安になりやすい気質」は、性格ではなく生物学的な要因として考えられています。

また、場面緘黙症を発症する子どもには、脳が受けた刺激に過敏に反応する気質を持つケースが多く見られます。限定的な場面において脳が強い刺激を受け、さらに不安感などの心理的な要因によって場面緘黙症が発症しているのではないかというのが、現在の有力な学説です。

これらは、子どもの努力や考え方で解消できるものではなく、適切な支援を受けて改善のためのトレーニングを必要とするケースが少なくありません。

場面緘黙症の症状

場面緘黙症の一番大きな特徴は、家庭では普通に話せている子どもが特定の場所(家庭以外の場所)で全く話せなくなってしまうことです。家庭では、何の問題もなく話せていることから家族も発見しにくく、また家族とは普通に話せていることから「自分の意思で話していないのではないか」と周囲の人に勘違いされてしまうケースも少なくありません。

人見知りや内向的な性格の人のなかには、発言するのが苦手だというケースがあるでしょう。しかし、場面緘黙症の場合、話せない状態が月単位や年単位で長く続くほか、その場所がリラックスできる状態であっても話すことができません。

多くの場合、集団生活が始まる4歳以降に症状が発見されますが、症状の現れ方や症状が現れる場面には個人差が大きく、話せないことを家族に相談できないまま成長するケースも稀ではありますが存在します。

また、場面緘黙症の場合、自分の意思の通りに体を動かせなくなる緘動(かんどう)症状が見られるケースも比較的多いです。子どもの場合、トイレに行けなかったり、体育が苦手だったりという特徴が見られることもあります。

場面緘黙症セルフチェック【子供向け】

続いては、具体的な症状から場面緘黙症のセルフチェックをしてみましょう。当てはまる項目が多いほど、場面緘黙症の可能性が高くなります。
  • 些細なことでも緊張しやすい気質がある
  • 強い不安を感じやすい気質がある
  • 特定の場所に行くとトイレに行きたいなどの要望を伝えられず失敗してしまうことがある
  • 特定の場所に行くと発言できない症状が1ヶ月以上続いている
  • 特定の場所に行くと大人子供に関わらず話しかけられても黙り込んでしまう
  • 特定の場所に行くと、体を動かしにくくなる
  • 周囲の視線を過剰に気にしてしまう
ただし、場面緘黙症の診断は専門的な知識を持った医師によって行われるため、以下のセルフチェックに多く当てはまる場合は医師の診察を受けてみるのがよいでしょう。

大人にも場面緘黙症がある

場面緘黙症の多くは、子どもの頃に発症・発見されます。前述したように、集団生活が始まる4歳以降に発見されるケースが多いです。

適切な治療や環境の改善などを行い、症状が改善していくケースがある一方、周囲が症状に気付かず本人も場面緘黙症であることを知らないまま大人になるケースも聞かれます。

社会に出て仕事についていても、職場などで他社とのコミュニケーションがとれない、会議などの注目される場で発言ができない、電話対応ができないなど、さまざまな困難に悩んでいる人も少なくありません。

特に、大人になってから困難を感じる人の場合、周囲が場面緘黙症に気付くことは難しいでしょう。困難によって、うつ病などの二次障害を発症したことをきっかけに、医療機関を受診することで場面緘黙症が発見されるケースがあります。

場面緘黙症に似ている病気

場面緘黙症のように、会話に困難が見られる病気や症状にはさまざまなものがあります。そのため、会話ができないからといって安直に、場面緘黙症と診断される訳ではありません。

会話や発語について困難が見られる病気や症状には以下のようなものもあります。
  • 全緘黙…場面に関わらず、全く会話や発語ができなくなる
  • 失語症…大脳の言語中枢に問題が生じ、聞く、話す、読む、書くなどの行動に困難が発生する
  • 失声症…精神的な負担が原因で、声を出そうとしても発声ができなくなる
  • 吃音症…スムーズに発語できなくなる
  • 社会不安障害…強い不安を感じ、発言に困難が発生することがある。同時に、震えや動機、緊張、吃音などの症状も併発することが多い
発語できない状況や症状の現れ方などによって、さまざまな病気や症状が疑われます。

場面緘黙症は二次障害のリスクにも要注意

場面緘黙症は、子どもに発症することや周囲の理解を求めにくいことから、二次障害のリスクが非常に高い症状です。

周囲が「何故話せないの?」と思うのと同時に、子ども自身も「何故、自分は話せないのだろう?」と葛藤します。周囲が子どもを理解しようとすることで、子ども自身は精神的に追い込まれてしまうのです。

特に、年齢を重ねるにつれて、話せないことが原因で理不尽な扱いを受けたり、子ども自身に劣等感を生じたりすることも少なくありません。

その結果、引きこもりや不登校、うつ病、社会不安障害などの二次障害を発症するリスクが高いです。

場面緘黙症の治療方法

場面緘黙症の治療には基本的に以下の方法が用いられます。
  • 認知行動療法
  • 薬物療法
  • 心理療法
  • 機能改善訓練
  • 環境改善
それぞれの治療方法には一長一短があるため、子どもの状態や周囲の環境に合わせて専門医が治療方法を計画します。

特に、環境改善は二次障害を防ぐためにも重要視されており、話せない原因が場面緘黙症にあり、子どもの意思や性格によるものではないと周知してもらうことは、子どもが安心して過ごせるようにするために欠かせない要因です。

場面緘黙症は何科を受診すればいい?

場面緘黙症を疑う場合、精神科や診療内科を受診しましょう。子どもの場合、児童精神科や発達外来などを受診してみるのもよいでしょう。

ただし、場面緘黙症は現代の医学で分かっていないことも多く、これまで診察したことがないという医師も少なくありません。専門的な知識や症状の治療経験の豊富な医師を受診するのがよいでしょう。

不安症や発達障害について深い見識を持っている医師や、言語聴覚士の在籍しているクリニックを受診するのもおすすめです。また、場面緘黙症を疑いつつも受診を躊躇しているのであれば、まずは発達障害センターや精神保健福祉センター、教育相談センターなどに日常生活の困り事として場面緘黙を相談してみるのもよいでしょう。

場面緘黙症患者が利用できる福祉支援

場面緘黙症は、発達障害者支援法に含まれる症状です。そのため、医師の診断がおりている場面緘黙症患者は以下の福祉支援サービスを利用できます。
  • 精神障害者手帳の取得
  • 自立支援医療制度の利用
  • 就労移行支援サービスの利用
これらの支援を利用することで、金銭面などでも負担を減らすことが可能です。まずは、自治体の窓口で福祉支援の利用を検討したい旨を相談してみるのがよいでしょう。

場面緘黙症の子供に接する際のポイント

場面緘黙症の治療には、専門的な治療以上に周囲の環境が重要視されます。そこで、場面緘黙症の子どもに接する際には、以下の点に留意しましょう。

緘黙を容認する

場面緘黙症の子どもは、自分自身で「話そう」と思っていても声が出ず発語・発言ができない状態です。場合によっては、症状のあらわれる特定の場面が限定的で、周囲から理解されないこともあるでしょう。

「話さない」のではなく「話せない」ことを周囲が深く理解し受け入れることが何より重要です。
場面緘黙症の子どもは不安を感じやすい気質を持っているケースが非常に多いため、緘黙を容認してくれる環境を整えるだけでも精神的によい影響を与えられることがあります。

支援はさりげなく行う

場面緘黙症の子供とコミュニケーションをする際に、ホワイトボードやカードを使う方法も挙げられますが、これらの方法は子どもによって向き不向きがあります。

他の子ども達と違うものを使っていることで「注目されてしまう」「恥ずかしい」と感じる子どもが一定数存在するからです。

場面緘黙症の子供には、プレッシャーや緊張感を減らす支援をするとよいでしょう。発言する時には他の子供と複数で行ったり、出欠確認をする際には「はい」と返事をするのではなく挙手制にしたりするなど、プレッシャーを感じにくく緊張感を和らげられる支援に取り組んでみてください。

また、体が動かなくなってしまう症状を持つ子どもには、事前に正解の行動を見せて「間違えてしまったらどうしよう」というプレッシャーを取り除いてあげるのもおすすめです。トイレなど自発的に行動することに困難がみられる場合は「今からトイレの時間にするから、行っておいで」と促してあげるとよいでしょう。

家庭と外部で情報共有をする

場面緘黙症の子どもの多くは、家庭と家庭以外の場所で全く違う顔を持っています。家庭では、話しをするため保護者が場面緘黙症に気付かなかったというケースは非常に多いのです。

一方、場面緘黙症の二次障害の症状は家庭で見られ、家庭以外の場所では全く気付かなかったというケースも聞かれます。話せないことで、周囲は異変に気付きにくくなるのです。

場面緘黙症の子どもに対応する場合は、家庭との連携が欠かせません。家庭と外部で密に情報共有をして、子どもの状態を見守る必要があります。

場面緘黙症へ容認と適切な支援を

場面緘黙症は長く「人見知り」「内気な性格」と理解されなかった症状です。今なお、そういった誤解を受けている人も少なくないでしょう。

自分の意思とは裏腹に話せないジレンマに、傷付いている子どもも多くいるでしょう。

これらの場面緘黙症の子ども達の苦しみを減らすためにも、場面緘黙症という病気があることを多くの人が知る必要があります。場面緘黙症について理解し、患者である子ども達の困難が少しでも減るよう支援していける社会にしましょう。

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