療育の専門用語・医療用語・略語を徹底解説!従事者が知っておくべき用語集
療育の現場では専門用語や医療用語が飛び交っている
療育では、主に発達障害をはじめとした障害を持つ子ども達を支援します。そのため、医療用語はもちろん、療育に関係する専門用語や略語などを用いて会話する機会も多いでしょう。
専門用語や医療用語が分からないと、他のスタッフからの指示を正しく理解できなかったり、利用者や保護者に適切な説明ができなかったりすることもあります。
分からない言葉をそのままにせず他のスタッフに確認することも大切ですが、なるべくスムーズに業務を進められるよう事前に重要度の高い用語だけでも押さえておくとよいでしょう。
専門用語や医療用語が分からないと、他のスタッフからの指示を正しく理解できなかったり、利用者や保護者に適切な説明ができなかったりすることもあります。
分からない言葉をそのままにせず他のスタッフに確認することも大切ですが、なるべくスムーズに業務を進められるよう事前に重要度の高い用語だけでも押さえておくとよいでしょう。
療育の仕事については以下のコラムでも詳しく紹介しています。
療育の仕事について知りたい人はぜひ参考にしてみてください。
療育に関する基本用語13選
最初に、療育従事者なら必ず知っておくべき基本的な用語を紹介します。似た意味を持つ言葉も多いですが、使用頻度が高いので間違えて覚えてしまわないようしっかりと違いを理解しておきましょう。
1.療育
療育とは、医療と教育を掛け合わせた造語です。医療用語ではありません。
本来は障害や怪我などが原因で四肢が不自由な子どもの医療ケアや教育を意味していましたが、近年は発達障害児支援の意味で使われることが多いです
本来は障害や怪我などが原因で四肢が不自由な子どもの医療ケアや教育を意味していましたが、近年は発達障害児支援の意味で使われることが多いです
2.発達支援
発達支援とは、障害のある子どもに対して身体的・精神的な発達を促し、自立的な生活を送れるよう支援することです。療育と同意義で使われることが多くあります。
3.早期療育
早期療育とは、小学校低学年相当の年齢までに行う療育のことを言います。早期療育は発達障害児支援に高い効果が期待されています。
4.発達支援センター
発達支援センターは発達障害を持つ未就学児を対象に、包括的な支援を行う地域の中核的な機関です。都道府県や政令指定都市、または都道府県知事が指定した法人(社会福祉法人や特定非営利法人など)が運営します。
発達支援センターには医療型発達支援センターと福祉型発達支援センターに分類されます。
発達支援センターには医療型発達支援センターと福祉型発達支援センターに分類されます。
5.児童発達支援事業所(児発)
児童発達支援事業所は、発達障害を持つ未就学児を対象に、地域での支援を担う機関です。指定基準を満たしている法人が運営しており、各施設によりさまざまな特色を持っています。
6.放課後等デイサービス(放デイ・放課後デイ)
放課後等デイサービスは、発達障害を持つ就学児を対象に、地域での支援を担う機関です。児発と同じく、指定基準を満たしている法人が運営しており、各施設によりさまざまな特色を持っています。
7.障害児通所支援事業所
障害児通所支援事業所とは、障害児が通所する事業所全般を指す言葉です。ここで紹介している児童発達支援事業所や放課後等デイサービスも障害児支援事業所にあたります。
8.相談支援事業所
相談支援事業所は、相談支援専門員が在籍し主に以下の業務を担います。
- 計画相談支援
- 相談支援
- 地域移行支援
- 地域定着支援
簡単に説明すると、保護者や障害児本人の悩みや問題を聞き取り、解決に適した機関の案内や橋渡し役を担っている機関です。
9.児童指導員
児童指導員は発達支援センターや障害児通所支援事業所などで、療育にあたる人です。児童指導員は任用資格で、厚生労働省の定める任用基準を満たす必要があります。
10.児童発達支援管理責任者(児発管)
児童発達支援管理責任者は、障害児通所支援事業所において個別支援計画の作成やスタッフの指導・管理などを担う責任者です。厚生労働省の定める実務経験を満たし、講習を受けることで資格を得られます。
11.相談支援専門員(相談員)
相談支援事業所で相談業務を担う人です。厚生労働省の定める実務経験を満たし、指定の講習を受けることで資格得られます。
12.受給者証
福祉サービスを受けるための証明証です。市町村などの自治体から発行されます。
13.サービス等利用計画
相談支援専門員が作成する、福祉サービスの計画書です。サービス等利用計画書がなければ、障害福祉サービスが受けられません。
療育に携わる人が知っておくべき医療用語15選
療育の現場ではさまざまな医療用語が用いられることもあります。続いては、療育従事者が知っておくべき医療用語を紹介します。
1.自閉症スペクトラム(ASD)
自閉症スペクトラムは、自閉症、アスペルガー症候群、広汎性発達障害などを総称する疾患概念です。ASDはAutism Spectrum Disorder(オーチズム スペクトラム ディスオーダー)の略語です。
2.自閉症
発達障害の一種で、社会性やコミュニケーション能力の発達に遅れが見られる障害です。自閉症の場合、精神発達や知的発達の遅延が見られるケースが多いと言われています。現在は自閉症スぺクトラムに分類されています。
3.高機能自閉症
自閉症のなかでも知的発達の遅れがないものです。
4.アスペルガー症候群
発達障害の一種で、自閉症スペクトラムのなかでも知的障害や言語障害を伴わない障害です。コミュニケーション能力の発達に遅れが見られ、強いこだわりなどの特異性が見られることが多く、遠回しな言い方や表情から相手の気持ちを汲み取ることが苦手な人も少なくありません。現在は自閉症スぺクトラムに分類されています。
5.広汎性発達障害(PDD)
広汎性発達障害は、自閉症、高機能自閉症、アスペルガー症候群、小児期崩壊性障害、レット障害などの総称です。現在は一部を除いて自閉症スぺクトラムに分類されています。
6.小児期崩壊性障害
小児期崩壊性障害は、ある時期を境に小児期の発達が退行していく障害です。2歳くらいまで正常な発達があるケースが多く、10歳までに機能障害を生じるケースが多いと言われています。広汎性発達障害及び、自閉症スペクトラムに含まれます。
7.レット症候群
レット症候群は、誕生後正常に発達しているにも関わらず生後6カ月頃に重度の発達後退が見られる障害です。女児に起こりやすいと言われています。レット症候群は、広汎性発達障害に含まれますが自閉症スペクトラムには含まれません。
8.注意欠如・多動症(ADHD)
注意欠如・多動症は、多動性や衝動性、不注意などの強い特性を持つ障害です。どれか一つの特性を持つこともあれば、複数の特性を持つこともあります。ADHDはattention deficit hyperactivity disorderの略語です。
9.学習障害(LD)
学習障害は、知的発達に遅れがないものの学習に関連する読み書きや計算などが困難になる障害です。現在は限局性学習症(SLD)と呼ばれています。
また、学習障害(限局性学習症)は、読字障害(ディスクレシア)、書字障害(ディスグラフィア)、算数障害(ディスカリキュア)に分類されます。
また、学習障害(限局性学習症)は、読字障害(ディスクレシア)、書字障害(ディスグラフィア)、算数障害(ディスカリキュア)に分類されます。
10.読字障害(ディスクレシア)
中枢神経に何らかの機能障害があり、知的発達に遅れがないにも関わらず文字を読むことに困難を持つ障害です。学習障害(限局性学習症)の一種です。
11.書字障害(ディスグラフィア)
中枢神経に何らかの機能障害があり、知的発達に遅れがないにも関わらず文字を書くことに困難を持つ障害です。学習障害(限局性学習症)の一種です。
12.算数障害(ディスカリキュア)
中枢神経に何らかの機能障害があり、知的発達に遅れがないにも関わらず計算に困難を持つ障害です。学習障害(限局性学習症)の一種です。
13.発達性強調運動障害
発達性強調運動障害とは全身運動や手先の細かな動きなどがとても不器用な障害です。発達障害の合併症として見られることが多く、極度の不器用だと思っていた人が発達性強調運動障害と診断されることもあります。
14.チック症(トゥーレット症候群)
チック症は、本人の意思に関係なく運動や発生が繰り返し起こる症状です。同じ言葉を何度も繰り返す症状などが見られる発音性チックと、まばたきなどを繰り返す症状などが見られる運動性チックに分類されます。
その他にもさまざまな症状が併発する複雑なタイプのチック症が長期間続く場合、トゥーレット症候群と呼ばれます。
その他にもさまざまな症状が併発する複雑なタイプのチック症が長期間続く場合、トゥーレット症候群と呼ばれます。
15.二次障害
二次障害は、既に発症している障害によって、二次的に引き起こされた別の障害です。特に、発達障害では周囲の理解を得られず、自己肯定感の低下から別の精神疾患などを引き起こすケースが見られます。
療育業務に関わる用語12選
療育業務に関わる専門用語は、特に知っておくべきです。業務をスムーズに進行するためにも、事前に覚えておきましょう。
1.アセスメント
療育において、支援開始前に行う面談のことです。利用者や保護者と面談を行い、支援に対する希望や、支援の先に望む希望などを聞き取ります。
2.モニタリング
療育において、支援内容の成果を確認することです。モニタリングの結果によって個別支援計画書の見直しなどを行い、計画書を更新します。
3.個別支援計画書
療育において、利用者の支援内容を記した計画書です。児童発達支援管理責任者が主となって作成し、長くても6カ月以内に内容の見直しや更新を行うことが義務付けられています。
4.粗大運動
体全体を使った大きな運動を粗大運動と言います。例として、歩く、跳ねる、走る等の運動が挙げられます。
5.微細運動
手先を使った細かい運動を微細運動と言います。例として、絵を描く、はさみで物を切る、ブロックを積み上げる等の運動が挙げられます。
6.感覚統合
人間が持つ7つの感覚(視覚、聴覚、味覚、嗅覚、触覚、前庭覚、固有覚)を統合的に用いることです。発達障害児には感覚統合の発達に遅れが見られるケースが多くあります。
7.心理療法
人の認知、行動、感情、感覚などを対話や教示、訓練などによって変化させる療法です。
8.認知行動療法
心理療法の一種です。認知の歪みを修正し、ものごとに対して柔軟に対処できるようにすることを目的に行い、精神疾患に特に高い効果が期待されます。
9.箱庭療法
心理療法の一種です。砂が敷かれた箱(箱庭)のなかに、建物や人、乗り物などの玩具を置いて心理状態の理解に繋げることを目的に行います。
10.音楽療法
音楽を介して行う療育です。演奏したり、歌を歌ったりすることで、障害の軽減や回復などの効果が期待されます、特に療育においては、社会性の構築への効果が期待されています。
11.インクルーシブ教育
障害児や健常児など、全ての子どもに対して、個別のニーズにあった教育的支援を行うことです。
12.ペアレントトレーニング
障害児を持つ保護者に対して、障害児に対する適切な育て方などを教えることです。保護者に対して特性の理解や、発達を促すための関わり方を指導します。
療育業務に関わる略語7選
療育業務に携わっていると略語を使うこともあります。特に有名なものは事前に押さえておくとよいでしょう。
1.SST
SSTはSocial Skills Training(ソーシャルスキルトレーニング)の略語です。社会生活技能訓練や生活技能訓練などの意味を持ちます。
2.ABA
ABAはApplied Behavior Analysis(アプライド ビエービア アナリシス)の略語です。行動分析学という意味を持ちます。療育をはじめとするさまざまな分野で用いられる学術的な考え方です。
3.TEACCH
アメリカで考えられた自閉症の人やその家族を包括的に支援するプログラムをTEACCHプログラムと呼びます。自閉症を持つ人が自立し、一般の人と共生することを目指す考え方で、世界からも注目を集めている自閉症支援の考え方です。
4.PT
PTはPhysical Therapist(フィジカル セラピスト)の略称です。理学療法士という意味を持ち、動作回復や理学療法の専門職です。
5.OT
OTはOccupational Therapist(オキュペーショナル セラピスト)の略称です。作業療法士という意味を持ち、理学療法士と同じく動作回復の専門職です。
6.ST
STはSpeech Therapist(スピーチ セラピスト)の略称です。言語聴覚士という意味を持ち、言語機能や聴覚機能、摂食、嚥下機能に関する専門職です。
7.CP
CPはClinical Psychologist(クリニカル サイコロジスト)の略称です。臨床心理士という意味を持ち、心理療法を行う民間資格者にあたります。療育で活躍する心理士には臨床心理士と公認心理士があり、臨床心理士が民間資格なのに対して公認心理士は国家資格です。
療育に必要な用語や略語を覚えて業務への理解を深めよう
業務に必要な用語をしっかりと覚えておくと、指示の伝達や受取がスムーズなだけでなく、業務に関する理解度も深まります。発達支援を自立的に考え取り組めるようになるためにも、療育業務に関わる用語を理解してみてください。