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保育士が発達障害を見つけた時どうやって療育に繋げる?子どもと支援を繋ぐ方法

保育士の療育については以下のコラムでも詳しく紹介しています。
保育士の療育について知りたい人はぜひ参考にしてみてください。


【保育士が療育をするメリットとは?発達支援との違いや必要資格・仕事内容なども徹底解説】のページはこちらをクリック

発達障害ってどんな障害?

保育士資格を取得するための学科には、発達障害についての科目もあります。しかし、発達障害について詳しく学んでいたり最新の情報を常に得ていたりする保育士は多くないでしょう。まずは、発達障害がどのような障害なのかを紹介します。

発達障害は、脳の働きがアンバランスな状態になることで起こる障害です。健常者は脳が適切なバランスを保つことでさまざまな事象に対して柔軟に対応できます。しかし、発達障害によって脳のバランスが崩れてしまうと、極端に強く働く器官や極端に働きの悪い器官が出てしまいます。

これにより、生活のさまざまなシーンで生きづらさを感じてしまうのが発達障害です。後天的な生活環境や躾などは関係なく先天性として生まれ持つため、他人ができていることを何故自分はできないのか理解できず苦しむ人も多くいます。

発達障害の種類

発達障害は大きく分けて3つの種類に分かれます。

ASD(自閉症スペクトラム症)

ASD(自閉症スペクトラム症)とは、コミュニケーションを苦手としたり、強いこだわりを持ったりすることが特徴的な発達障害です。

自閉症、高機能自閉症、アスペルガー症候群などが含まれ、発語の遅れなどをきっかけとして3歳までに診断を受けるケースが多いです。
しかし、中には知的障害を持たず発見が遅れるケースがあり、保育士をはじめとする身近な大人の感じる違和感からASDの診断に繋がることもあります。

これまで見過ごされてきたASD児が成人し、社会生活の中で生きづらさを感じる「隠れ発達障害」「大人の発達障害」なども大きな問題になっています。

ADHD(注意欠如・多動性障害)

ADHD(注意欠如・多動性障害)は、不注意行動や多動行動、衝動性などが強く見られる発達障害です。

これまで「扱いにくい子」とされて発達障害を見過ごされてきた子どもたちの多くはADHDであったとも言われています。

特に幼児に関しては健常児との違いが分かりにくく、年齢による落ち着きの無さなのか、障害による落ち着きの無さなのかを判断するのは非常に困難です。就学後や、大人になってからADHDの診断がつくケースも少なくありません。

また、「時間を守れない」「約束を忘れる」「カッとなりやすい」など、人間関係に支障を着たしやすいことから大人のADHDは、うつや不安障害といった二次障害を引き起こす可能性も危惧されています。

LD(学習障害)

LD(学習障害)は知的障害を伴わないにも関わらず学習機能が正常に働かなくなる発達障害です。

本人がどれだけ努力して勉強をしても、学習に対応することができず、自己否定に陥る子どもも多いと言われています。

ASD、ADHDなどを伴うケースも多くみられ、教育機関、療育機関、医療などとの蜜な連携が求められます。主に就学後、勉強の遅れなどから発覚するケースが多いです。しかし、近年保育園でも学習カリキュラムを取り入れる風潮にあり、保育園での学習カリキュラムを通してLDを疑われるケースもあります。

DCD(発達性協調運動障害)

DCD(発達性協調運動障害)は、他の発達障害と合併して起こることが多い発達障害です。本来成長と共に身に付けていく協調運動(複数の間隔や運動を連携させて行う運動)を苦手とします。

「不器用な子」と評されやすいですが、特性が関係しているためいくら練習をしても上達しにくく、失敗を繰り返す内に子どもが自己肯定感を下げてしまうケースも多く聞かれます。重度のDCDには協調運動の発達を促す療育が必要なため、スムーズな療育との連携が求められると言えるでしょう。

保育の現場でよく見られる「扱いにくい子」実は発達障害の可能性も

これまで発達障害はそのメカニズムが解明されておらず、日本で知られるようになってまだ20年程です。
最近は、著名人が発達障害を好評することで、社会的に発達障害を受け入れる風潮が出始めています。

一方で、発達障害に関する理解がそれほど浸透しておらず未だに「扱いにくい子」「躾のなっていない子」などの誤った認識を受けているケースも少なくありません。発達障害を持つ人達を支援に繋げるため2005年に発達支援法が制定されましたが、充分な支援システムが完成しているとは言い難いでしょう。

発達障害は早期支援が重要です。子どもとの関わりが多い保育士や幼稚園教諭などが、発達障害についての正しい知識や理解を持つことで、スムーズに支援へ繋げられるようになります。

保育士が知っておくべき発達障害の主な特性

保育士として子どもに関わる中で、発達に関する違和感を感じた時には発達障害を疑ってみてもよいでしょう。

「いきなり障害を疑うなんて…」と思うかもしれませんが、早期に診断がついて療育に繋がれば適切な支援が受けられますし、個性の範疇だとすれば保育士としての関わり方を考えるきっかけになります。

まずは、発達障害に多くみられる特性について知り、発達の気になる子どもによく見られる行動と照らし合わせてみてください。

ASD(自閉症スペクトラム症)に見られる特性

ASD(自閉症スペクトラム症)に見られる特性には以下のものがあります。
  • 表情や状況による他人の感情の読み取りが苦手
  • 特定の物に対する強いこだわりを持っている
  • 環境の変化や見通しの立たない状態が苦手
  • 言葉を額面通りにしか受け取ることができない(比喩表現などが理解できない)
  • 会話が一方的であったり主体的であることが多い
自閉症の特徴として「ひとり遊びが多い」「笑顔が出にくい」などの特徴を挙げられることがありますが、これらの特性は子どもの個性との見分けが大変難しいです。

ASDを疑った場合は、子ども本人の行動よりも周りとの関わり方に着目して特性の有無を観察してみてください。

ADHD(注意欠如・多動性障害)に見られる特性

ADHD(注意欠如・多動性障害)には、特性に注意欠如が強く表れる不注意優勢型と、多動や衝動性が強く現れる多動・衝動優勢型があります。

不注意優勢型

ADHD(注意欠如・多動性障害)の不注意優勢型に見られる特性には以下のものがあります。
  • 忘れ物が多い
  • 約束したことや直前に伝えたことをすぐに忘れてしまう
  • 興味の移り変わりが激しい
  • ルーティーン化された作業が苦手
不注意優勢型ADHDの特性は、健常児にも当てはまりやすいため特に判断に悩むことがあるでしょう。

その際には集中力の有無に着目してみてください。
不注意優勢型ADHDは、緊張感や好奇心などを生じている場合に強い集中力を発揮する傾向にあります。一方で、緊張感や好奇心などの興奮要素が無い場合に集中することを苦手とします。お絵描きや粘土など、好きなものには周りが見えなくなるような集中力を発揮するのに、片付けや自分の支度など毎日行うルーティーン化された作業への集中力を保つことが苦手です。

これは、健常児の場合ある程度一定の集中ホルモンを分泌し続けているのに対し、不注意優勢型ADHD児の場合緊張感や興奮からくる刺激を受けなければ集中ホルモンを分泌できないという点から起こる特性です。

子どもは好きなものや嫌いなものへの反応が顕著ですが、あまりにも集中時とそうでない時に差がある場合は不注意優勢型ADHDが疑われます。

多動・衝動優勢型

多動・衝動優勢型ADHDに見られる特性には以下のものがあります。
  • じっとしているのが苦手
  • 時間内に定められた作業をするのが苦手
  • 思ったことを考えずに行動に移してしまう
  • 静かにするのが苦手
  • 周りに合わせることが苦手
多動・衝動優勢型ADHDも不注意優勢型同様、健常児との見分けが大変困難です。多動・衝動優勢型ADHDは「自己抑制」を苦手とします。そのため、カッとなって手を上げてしまったり、他人が使っている玩具を取り上げてしまうなど、乱暴な行動が多くなりやすいです。健常児と違い、特性として自分の感情を抑制できないため、注意されても改善できず、注意された直後に同じ行動を取るなどの特徴も見られます。

注意しても乱暴な行動が収まらな場合、多動・衝動優勢型ADHDを疑ってみてもよいかもしれません。

LD(学習障害)に見られる特性

LD(学習障害)はディスレクシア(識字障害)、ディスグラフィア(書字障害)、ディスカリキュア(算数障害)の3つに分類されます。

ディスレクシア(読字障害)

ディスレクシア(読字障害)には以下の特徴があります。
  • 文字が読めない
  • 他の子が間違えないような読み間違いをする
  • 「っ」と「ょ」、「ね」と「ぬ」など形の似ている文字の読み間違いが多い
  • 文章を読んでいる途中で行を飛ばしてしまうことが多い
保育園の学習カリキュラムの中でディスレクシア(読字障害)を発見するのは大変難しいでしょう。ディスレクシア(読字障害)は、字が読めないのではなく認識できない障害です。視力に問題ないにも関わらず「字がグチャグチャに見える」「見えにくい」などの主訴があった場合には、ディスレクシア(読字障害)を疑ってみてください。

ディスグラフィア(書字障害)

ディスグラフィア(書字障害)には以下の特徴があります。
  • 字を書き取るのが苦手
  • 行やマスにそって書くのが苦手
  • 長い文章を書くのが苦手
  • 考えたことを書くのが苦手
ディスグラフィア(書字障害)も保育園の教育カリキュラムで発見するのは難しいでしょう。一般的には就学後7~9歳までの間で診断されることが多いです。
読むのは得意なのに、書くのは苦手な子やなぞり書きや写し書きが極端に苦手な子には注意してみてください。

ディスカリキュア(算数障害)

ディスカリキュア(算数障害)には以下の特性があります。
  • 数を数えるのが苦手
  • 計算ができない
  • 数字の大小が理解できない
  • 時計が読めない
ディスカリキュア(算数障害)は、保育園の学習カリキュラムでも兆候が見られることがあるものの見過ごされやすい傾向にあります。それは、保育園で行うのがあくまで「就学準備」としてのカリキュラムだからです。

保育園や幼稚園でも絵本などを読む機会があるため、文字に関する学習を積極的に行うことが多いです。一方、算数は「小学校の分野」と区切られることが多く、数字の書き方などは練習することがあっても計算にまで発展するのは余程教育に力を入れている施設だけです。

1個と2個、どちらが多いのか分からない、6歳程になっても1から10まで正確に数えられない等の様子が見られたらディスカリキュア(算数障害)を疑ってみてもよいでしょう。

保育士が子どもの発達障害を疑った際にとるべき行動

ここまで紹介した発達障害の特性が子どもの行動に当てはまった時、保育士はどのように行動すべきなのでしょうか?

続いては、保育士が子どもの発達障害を疑った際にとるべき行動を紹介します。

複数の保育士で子どもを観察する

闇雲に保護者に「発達障害の疑いがあるかもしれない」などと伝えると不信感を抱かれてしまう可能性が高いです。

まずは、複数の保育士で行動をよく観察してみましょう。特に、保育経験が豊富な保育士に協力を仰ぐのがよいでしょう。

1人の判断では、個性と特性の差を見極めるのが難しいです。複数の保育士で、行動を観察し客観提に評価・判断をしてみてください。

地域の療育施設と連携をとる

児童福祉法に基づく療育センターには、地域の保育園や幼稚園と連携する仕組みがあります。管轄区内にある公共の療育センターに問い合わせ、スタッフの派遣などを依頼してみるのもおすすめです。

実際に、発達障害児に関わるスタッフに子どもの特性を観察してもらい意見を求めてみてもよいでしょう。

保護者に家庭での様子などを聞く

複数の保育士が発達障害の可能性を疑った場合、保護者にも相談する必要があります。
診断や療育に繋げるためには保護者の協力が欠かせません。

まずは、家庭での困り事などが無いのかを伺い、そこから発達障害の特性が見受けられないか判断しましょう。
園での困り事なども伝え、冷静に発達障害の可能性を伝えてみてください。予期していない保護者は不安やパニックに陥ることもあるため、発達障害に関しての正しい知識や地域での連携があることなど、順を追って丁寧に進言することが大切です。

保護者に聞かれて答えられる?発達支援(療育)について

子どもが発達障害かもしれないと突き付けられた保護者は、これからどうすればよいのか、何をすればよいのか強い不安を感じることでしょう。

そんな時「私達には分からないので、後は発達障害支援施設に問い合わせてください」では、保護者を突き放すようなものです。分からないことを分からないということは大切ですが、保育のプロとして最低限の知識を持っておき、保護者の疑問や不安に対応することも大切でしょう。

最後に、保護者に尋ねられやすい発達支援についての疑問などを紹介します。

療育ってなに?

療育は発達障害をはじめとする障害に対して、特性に配慮しながら育成することを言います。

つまり、医学的な観点から発達障害を抱える子ども達が日常生活を不自由なく送れるようサポートするということです。

発達障害は病気ではないので、治療したり完治したりすることが目的では無い、という点を間違えないよう注意しましょう。

療育ではどんなことをするの?

療育では、特性に配慮したプログラムを通して、子ども達がスムーズに日常生活を行えるよう訓練をします。

こだわりが強いASDの子には、こだわりを抑えられるようにしたり、多動傾向が強い子には椅子に着席するための環境整備やトレーニングを行います。

療育と聞くと特別な事をしているようですが、子ども達の「できない」を理解し、できない事と上手く付き合いながら生きていく方法を教えるのが療育です。

療育センターと発達支援センターの違い

療育を行う場所として療育センターや発達障害センターなどが知られています。保護者からすると違いが分からず、どこに問い合わせるのがよいのか迷ってしまうこともあるでしょう。

療育と発達支援は同意義の言葉として使われています。つまり、療育センターと発達支援センターはどちらも療育施設なのです。

しかし、児童発達支援センター(療育センター)と児童発達支援事業所、医療型児童発達支援センターはそれぞれに管轄や役割が違うので注意してください。
児童発達支援センター(療育センター)
児童福祉法において、地域の療育施設として設置されている発達障害支援施設
放課後等デイサービス
就学児を対象にした児童発達支援施設
医療型児童発達支援センター
児童福祉法において設置されている、児童発達支援と医療を提供する施設
児童発達支援事業所
民間団体や福祉法人などが運営している児童発達支援の事業施設

保育士は発達障害や療育に関する知識も持っておこう

今や1クラスに2~3人の発達障害児がいると言われています。発達障害は決して珍しい障害ではないのです。

保育士として子どもに関わる以上、発達障害児を保育する機会もあるでしょう。そんな時「どう対応すればよいのかわからない」と困ってしまうことがないよう、これからの保育士は発達障害についても知識を持っておくとよいでしょう。
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