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療育で注目されるABA(応用行動学)とは?概要やメリット・基本的なやり方を徹底解説

ABA(応用行動分析)とは

ABAとは、Applied Behavior Analysisの略で、日本語では応用行動分析と呼ばれています。

アメリカの行動学者によって提唱された心理技法のひとつで、アメリカなどでほぼ標準的に療育に取り入れられている技法です。

ABAは療育分野以外にも、スポーツやリハビリ、アニマルトレーニング、企業コンサルティングなどさまざまなシーンで活用されています。

ABA(応用行動分析)の基本的な考え方

ABAの基本的な考え方は、好ましい行動を増やして望まない行動を減らすというものです。

好ましい行動を取った後に自分自身にとって良い事が起これば何度もその行動(好ましい行動)を繰り返したくなるし、望まない行動を起こした後に望んだ結果を得られなければその行動(望まない行動)は減っていくという考え方がベースとなっています。

行動を分析し、体系化された中で好ましい行動への条件付けを行っていくABAは、発達障害児にとって分かりやすく、高い効果が認められている療育手法です。

療育でABA(応用行動分析)支援を行うメリット

療育としてABAを行うメリットは大きく分けて3つあります。

問題行動を減らすことができる

ABAを療育に取り入れることで問題行動を減らす効果が期待できます。

問題行動には必ず引き金となる要因があります。ABAの理論に基づいて行動を分析すると、問題行動を起こす要因を見つけることができるでしょう。

問題行動を起こす要因を見つけることができれば、要因を取り除く、解消する、その要因に至らないよう配慮するなどの行動基準が見えてきます。

ABAを通して問題行動を減らすことは、療育において大きなメリットと言えるでしょう。

こだわりを減らすことができる

自閉症児など多く見られるこだわりの強さも、ABAを活用し抑えられる可能性があります。

ABAによってできることが増えると共に、気に入るものや好みのものは増えていきます。しかし、全てに対して同じ熱量で執着するのは不可能でしょう。

これにより、さまざまなものにこだわりが分散され、変化への対応力を身に付ける効果が期待されます。

コミュニケーション能力を高めることができる

ABAではオペラント条件付けが行われます。オペラント条件付けとは、ある行動によって起きた環境変化に応じて、その行動の自発頻度が変わることを言います。

つまり、好ましい行動で希望する結果が得られるようにする際、アクションをコミュニケーションに変えることで、言葉による意思表示によって望む行動を起こすことができるようになることも期待されます。

コミュニケーションを苦手とする子が多い発達障害児ですが、ABAを用いることで自分の意思を適確に言葉で伝えられる技術を得られる子どももいます。

ABA(応用行動分析)の基本的な療育のやり方

実際には複雑な分析や条件付けの元行われるABAですが、ここでは基本的なやり方を紹介します。

単純に今回紹介する方法でABAを行うことができるという訳ではありませんが、ABAについての基本的な理解を深める際の参考にしてみてください。

STEP1.行動分析を行う

ABAでは最初に行動分析を行います。よく用いられるのがABC分析という方法です。

ABC分析では以下の内容を分析します。
  • 先行事象(Antecedent)-対象行動が起こる前の状況や行動
  • 行動(Behavior)-対象行動
  • 結果(Consequence)-行動が起こった事で得た事象
行動に限定せず、環境要因にも目を向けて分析することが大切です。

行動だけに着目せず、その前後の事象を分析することで「なぜ対象行動が起こったのか?」という根本的な理由を理解することができます。

STEP2.好ましい行動を強化する

対象行動が好ましい行動だった場合、その行動を繰り返し自発的に起こるよう強化します。

強化するためには、対象行動を取ったことで本人にとってメリットのある結果を導く必要があります。そこで用いるのが強化子です。

強化子と聞くとご褒美を連想しがちですが、強化子は物に限定しなくてもよいでしょう。強化子は本人が求めているものであればメリットとしての役割を果たします。

つまり、褒められることに喜びを感じる子なら「よくできたね。」「すごいね」などの声掛けでも強化子になります。
また、スキンシップを好む子なら擽ったり抱きしめたりすることも強化子となるでしょう。

STEP3.望まない行動を消去する

望まない行動が起きた場合には、対象行動を減らすために消去します。

消去するためには、対象行動を取ったことで本人にメリットのない結果を招きます。ただし、メリットのない結果とはデメリットと異なることを理解してください。

「叱られる」など精神的な苦痛を伴うものではなく、本人が望んだ結果にならなかったという状況を作り出します。

つまり、「対象行動を起こしても望む結果にならないなら、やっても意味が無い」と感じることが重要なのです。

また、消去する際には強化する時以上に慎重な行動分析を行うようにしましょう。極端な例ですが、注目されたいという要求を持っている子どもがいたずらをした場合、視線を向けることが強化子になり問題行動を繰り返す結果になることもあります。

どのような要求を持って対象行動を起こしたのか、丁寧な分析が必要となるでしょう。

ABA(応用行動分析)の代表的なアプローチ方法

ABAの基本的な考え方に基づいたやり方を紹介しましたが、それ以外にもさまざまなアプローチ方法があります。

ABAは正確な理論の元行う必要があるため、療育にABAを取り入れたいと考えている人は以下のアプローチ方法についても学んでみてください。
  • DDT(ディスクリート・トライアル・トレーニング)
  • NET(自然環境教育)
  • IT(機会利用型指導法)
  • PRT(機軸行動発達支援法)
  • VB(言語行動)
大変専門的な内容になりますが、ABAを療育に取り入れる上で重要なアプローチ方法ばかりです。

問題行動が一時的に増加する「消去バースト」とは

ABAを実際に行うと、一時的に望まない行動が爆発的に増えることがあります。これを消去バーストと言います。

消去バーストは、これまで対象行動を行うことで得られていた何らかのメリットが得られないことに「何故?」という疑問が生まれ、「もっと行動を強くすれば望む結果が得られるかも」と本人が試行錯誤した結果起こる現象と考えられています。

多くの場合消去バーストは消去が完了する直前に現れる行動です。消去バーストが起こった際に、望む結果を得てしまうと問題行動が悪化するので注意してください。

療育でABA(応用行動分析)の効果を高めるポイント

療育においてABAは、大きな効果が期待できるアプローチ方法です。しかし、効果的に行うには理論を理解しいくつかのポイントを押さえる必要があるでしょう。

ABAを実践する際は、以下のポイントを押さえて療育に取り入れてみてください。

エラーレストレーニングを心掛ける

ABAではや望まない行動を起こさせないことも重要です。特に、望まない行動を引き起こす要因が環境であるなら、本人にとって適切な環境設定が必要と言えるでしょう。

ABAの基本はエラーレストレーニングです。多くの場合望まない行動は、反復することで強化されます。反対を言えば、望まない行動を起こす頻度が下がれば自然に弱化していくと言えるのです。

適切な分析を経て、望まない行動を引き起こす要因を徹底的に分析し、好ましい行動を多く引き出すようにしてみてください。

丁寧なプロンプトを行う

エラーレストレーニングを心掛ける上で重要なのが、丁寧なプロンプト(説明)です。
好ましい行動を定着させるために最も効果的なのは成功体験を積むことです。そのために、成功させる方法を具体的に示す必要があります。

強化するには、何も自発的に行動ができている必要はないのです。丁寧なプロンプトで導かれて成功しても「好ましい行動を取った」という結果は同じです。このように成功体験を得ることで、行動は徐々に自発的に起こりやすくなるでしょう。

スモールステップで行う

ABAをより効果的に行うには、スモールステップが欠かせません。スモールステップで行うことで、より高度なエラーレストレーニングを実現できます。

特性によって苦手とする行動では、出来得る限りの細分化を心掛けてください。

日常的に強化を意識する

ABAを意識し始めると、ついつい問題行動の消去に目的を置いてしまいがちです。しかし、ABAを効果的に行うためには、日常生活の中で好ましい行動を強化していくことも大切です。

何となく調子のよい日や、好ましい行動が出る条件が偶然揃っている時など、普段なら苦手とする行動が出現するタイミングがあります。自然と好ましい行動が現れた際に、強化子を与えることで対象行動は効果的に強化されます。

療育に役立つABA(応用行動分析)の資格がある

ABAを一般的な療育アプローチとして取り入れているアメリカやカナダなどの諸外国では、ABAに関するさまざまな資格があります。

一方、日本にはまだ国が認定するような資格は多くありません。国内に資格が少ないとは言え、海外で資格を取得するのは、費用、期間、言語などさまざまな面でハードルが高いでしょう。

そこでおすすめなのが、日本語に対応した国際ABA資格である「ABAセラピスト国際資格」です。
The Qualified Applied Behavior Analysis Credentialing Board (QABA®)というアメリカの団体が認定している国際資格で、アメリカやカナダではABA療育を行う際に標準的に取得する資格でもあります。

ABAセラピスト国際資格を取得するには、40時間のセミナー受講と15時間の実習を経て実技・筆記試験に合格する必要があります。

資格取得に必要な費用は以下のとおりです。
  • 講習費49,800円(税別)
  • 実習・実技試験受験費69,800円(税別)
  • 筆記試験受験費用14,000円(税別)
  • 合計133,600円(税別)
ABAセラピスト国際資格は取得後2年に1回有料での更新が必要な点も考慮しておきましょう。簡単に取得できる資格ではありませんが、療育従事者としてのスキルアップ・キャリアアップに効果的な資格と言えるでしょう。

ABA(応用行動分析)を学ぶ際におすすめの本

多くの先進国で療育において効果が実証されているABAですが、日本ではまだ一般的に普及されているアプローチ技法ではありません。

より詳しく学ぶためには、ABAに関するセミナーや本から知識を得るのもおすすめです。最後に、ABAを学ぶ際におすすめの本を紹介します。

発達障害のある子の「行動問題」解決ケーススタディ―やさしく学べる応用行動分析

初めて行動応用分析を学ぶ人におすすめなのが「発達障害のある子の「行動問題」解決ケーススタディ―やさしく学べる応用行動分析」です。著者は東京学芸大学教育学部特別支援科学講座教授である小笠原恵子氏です。

ABAについて臨床の視点から基本を説いているため、段階的に行動応用分析について理解しやすいでしょう。

保護者と先生のための応用行動分析入門ハンドブック―子どもの行動を「ありのまま観る」ために

ABAをより分かりやすく、一般の人でも理解しやすい表現で解説しているのが三田地真実氏、岡村章司氏の著書「保護者と先生のための応用行動分析入門ハンドブック―子どもの行動を「ありのまま観る」ために」です。

ABAの入門編としてぴったりな本書は、療育従事者だけでなく発達児童児の保護者や保育士、幼稚園教諭などからも高い評価を得ています。
ABAの基本分析の方法や、子どもと関わる上でABAを取り入れる実践的な方法などが分かりやすく解説されている本です。

施設職員ABA支援入門:行動障害のある人へのアプローチ

より専門的にABAを理解したいという人には「施設職員ABA支援入門:行動障害のある人へのアプローチ」がおすすめです。著者は村本浄司氏です。

療育従事者として発達障害児の療育を行う上でのABA支援について詳しく解説されており、ある程度の基礎知識を得ている人向けの本と言えるでしょう。ABA支援の指南書のような内容で、療育にABAを取り入れるヒントがたくさん記載されています。

ABAを取り入れて療育の質を高めよう

ABAは既に諸外国で発達障害児の療育に高い効果を示しているアプローチ方法です。今後はさらに日本でも浸透し、いつか療育のスタンダードな考え方となるかもしれません。

療育の質を高め、発達障害を持つ子ども達の生きづらさをひとつでも減らしていくため、ABAについて学んでみてはいかがでしょうか。療育従事者としてABAの知識やスキルを得て、より効果的な療育に取り組んでください。

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