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療育プログラムの種類や目的・内容・基本的な5つのアプローチ方法を解説

療育プログラムは支援を必要とする子ども達にとって大変重要なものです。プログラムを行う理由や根拠とする理論を知っておくことは、保護者の安心感や信頼感にも繋がるため、指導員は「なぜこのプログラムを行っているのか」ということを深く理解しておく必要があるでしょう。

この記事では、療育プログラムの内容や根拠となる理論、5つの療育テーマと内容例、最新の療育プログラムなども紹介しています。ぜひ、療育プログラムを考える際の参考にしてみてください。

療育の種類とは

療育のプログラムを考える前に、特性や発達の段階に適した形態を選ぶことも療育を効果的に行うために欠かせないステップと言えるでしょう。最初に、「集団療育」「個別療育」「小集団療育」の3つの違いやメリット・デメリットについて紹介します。

集団療育

集団療育とは、中~大規模な集団で療育プログラムを行うことです。主に5~10人程のグループで行うケースが多く見られます。

メリット

集団療育のメリットには以下のものがあります。
  • コミュニケーション方法を学びやすい
  • 模倣(人の真似をすること)によって行動を覚えやすい
  • 集団に合わせる・集団の中で主張するなどの行動を学びやすい

デメリット

集団療育のデメリットには以下のものがあります。
  • 対人関係の構築が苦手な子どもにとっては強いストレスになる
  • コミュニケーションが上手くとれないことから他害などのトラブルが起こるケースがある
  • 集団行動に対して苦手意識を持ってしまう子どももいる

個別療育

個別療育とは、子どもと指導員が1対1で療育プログラムを行うことです。

メリット

個別療育のメリットには以下のものがあります
  • 子どもの発達や特性に合わせた療育ができる
  • きめ細やかな支援ができる

デメリット

個別療育のデメリットには以下のものがあります。
  • 大人に対する関わり方しか学べず、子ども同士のコミュニケーションが不得意になることがある
  • 子ども同士の模倣による学習機会がない
  • 集団に合わせたり集団の中で主張したりするといった学習機会がない
  • 施設の規模や在籍指導員数によっては多く受け入れできない

小集団療育

小集団療育とは2~3人の小さな集団で療育プログラムを行うことです。主に、個別療育を経て集団療育を行う前段階に適しており、個別療育と集団療育の両方のメリットを合わせもつと言われています。

メリット

小集団療育のメリットには以下のものがあります。
  • 子どもの発達に合わせた細やかな支援ができる
  • 子ども同士のコミュニケーションや模倣を学べる

デメリット

小集団療育のデメリットには以下のものがあります。
  • 施設の規模や在籍指導員数によっては多く受け入れできない

療育の効果

療育の目的は、心身の障害やそれの準ずる特性によって健常者と同等の社会生活を送るのが難しい子ども達を支援することです。療育プログラムはこれらの目的のために行われ、以下のような具体的な効果が期待されます。
  • コミュニケーション能力の向上
  • 身体能力の向上
  • 日常生活に必要とされる能力の習得
  • 特性についての理解
  • 自己肯定感、自信の向上

療育プログラムを考える際に知っておくべき代表的なアプローチ方法

療育プログラムは、根拠を持って行うことが重要です。続いては、療育プログラムを考える際に参考となる、代表的な療育のアプローチ方法について紹介します。

応用行動分析

応用行動分析はApplied Behavior Analysisの頭文字をとってABAと呼ばれることもあるアプローチ方法です。応用行動分析では強化、弱化、消去の3原則を基本とし、ある行動に対して心理的要因と環境的要因の両面からアプローチします。

応用行動分析の基本的なアプローチで重要なのは、環境要因です。子どもの特性を理解した上で問題となる行動を起こす環境要素を排除し、望む行動が起こる状況を作ります。強化子(ご褒美となるもの)によって、その行動を行うメリットを得ることで、子どもは自ら望む行動をとるようになり、問題行動を減らす結果に繋がると言われています。

TEACCHプログラム

TEACCHは、アメリカで考案された自閉症やそれに準ずるグレーゾーンの人向けの療育アプローチです。Treatment and Education of Autistic and related Communication handicapped Childrenの略称で、現在は日本でも広く普及されている療育に対する考え方のひとつと言えます。

TEACCHの基本概念を簡単に説明すると「自閉症という特性を受け入れ、社会への順応を促す」とも言えるでしょう。これらの概念に基づき自閉症による発達の凹凸を治すのではなく、凹凸のまま社会に順応できるよう包括的に個別支援することを目的とします。

TEACCHプログラムの指導方法の例として以下のものがあげられます。

物理的構造化

個別化された環境と活動を一対にして何をすべきか理解しやすい環境を整えるアプローチ方法。パーテーションなどで場所を区切り余計な視覚的刺激を減らすことで活動への対応がとりやすくなる。

視覚的構造化

スケジュールや感情、行動などさまざまな情報を視覚化し、不安や混乱を抑制するアプローチ方法。写真やイラストなどで視覚化するのが望ましい。

コミュニケーション力の評価

TEACCHではコミュニケーション機能を「要求」「注意喚起」「拒絶」「説明」「情報提供」「情報請求」「感情や共感の表現」に分類している。さらに形態を「泣く・パニックを起こす」「ジェスチャー」「物を示す」「絵や写真を用いる」「文字」「サイン」「話す」の7段階に評価する。コミュニケーションを細分化し評価することで、現状の能力を適切に把握し対応する。

ワークシステムの構築

作業を自立的に行えるようワークシステムを構築し、作業の内容、量(時間)、終了の条件、次の行動を簡易的なルールに当てはめて示すアプローチ方法。簡易的なルールとして「左から右へ」「同じ色を合わせる」などが適用されることが多い。指示書を引き出しに入れておき、左の引き出しから始め指示書の内容が終わったら右の引き出しに入っている指示書を実行するといった取り入れ方をする。

認知行動療法

認知行動療法は心理療法のひとつで、療育にも効果が期待できると言われています。認知行動療法は認知(物事の受け取り方や考え方)に働きかけることで、気持ちや行動のコントロールを行うアプローチ方法の総称です。

さらに細分化すると暴露方法(エクスポージャー法)、リラクゼーション法、呼吸法、モデリング法、ベックの認知療法、エリスの論理療法などさまざまな種類があります。

療育の現場では特に自閉症スペクトラムに効果が期待できるとされ、暴露療法(エクスポージャー法)が用いられるケースが多いです。暴露療法では、恐怖や不安を感じるものに対して、段階的に自分自身を晒し徐々に克服していきます。

例えば、特定の音を苦手とする子どもに対して、極小音でその音を聞かせ、徐々に音を大きくしていきながら聞き慣れさせるのも暴露療法と言えるでしょう。

箱庭療法

箱庭療法は、認知行動療法と同じく心理療法のひとつです。砂の入った箱の中にさまざまなミニチュアを置いて自分の箱庭を作り、それによって自己表現をしたり物語を作って遊んだりします。

言葉で自己表現するのが苦手な子どもに特に適しており、安心感を得ながら自己表現ができるアプローチ方法です。自己表現をし、できあがった作品を認めてもらうことで自己肯定感の向上などが期待できるでしょう。

指導員が箱庭療法に関して深く理解すれば、できあがった作品から子どもの深層心理を読み解くこともできます。

ソーシャルスキルトレーニング

ソーシャルスキルトレーニングとは、社会生活に欠かせないスキルを習得する訓練です。「社会スキル訓練」や「生活技能訓練」と呼ばれることもあります。

ソーシャルスキルトレーニングは、発達障害児に限らず社会生活を送る上で全ての人に求められるため、健常児やグレーゾーンの子ども達にも積極的に摂り入れられている方法です。

療育プログラムで用いられる5つのテーマと内容例

療育プログラムを考える際にはテーマに分類して、それぞれの内容を決めていく方法がおすすめです。

今回は療育プログラムに使われることが多い「運動」「音楽」「学習」「コミュニケーション」「生活」の5つのテーマの目的と、それぞれの内容事例、プログラムを作るポイントなどを紹介していきます。

運動

運動療育は体の基礎能力を感覚として身に付け、自分のイメージ通りに体を動かすことが目的です。幼稚園や小学校で体育の授業に対応できるようにすることを目的としているケースや、体を動かすなかで判断力や行動力を総合的に身に付ける目的もあります。

内容例

  • 跳び箱
  • 鉄棒
  • マット運動
  • トランポリン
  • なわとび
  • ボール遊び
  • 指遊び

療育プログラムを考えるポイント

運動療育では、運動を得意とする子どもと運動を苦手とする子どもにグループ分けして別途プログラムを検討するのがおすすめです。「失敗しても良いから」といって取り組むのは簡単ですが、できないからという理由で運動療育を嫌がる子どもも少なくありません。運動を苦手とする子どもには微細運動や粗大運動など成功体験を積み上げやすいプログラムから導入することで、自己肯定感や達成感を得られ前向きに運動療育に取り組みやすくなるでしょう。

音楽

音学療育では、表現力や感受性の向上を目的とします。また、音楽療育と運動療育をかけ合わせたプログラムを行うケースもあります。

内容例

  • 歌を歌う
  • 音楽を聴く
  • 音楽に合わせて踊る
  • 楽器を演奏する
  • 音を聞いて何の楽器か当てるゲーム

療育プログラムを考えるポイント

音楽療育はリラックス効果も期待できる反面、聴覚過敏の子どもにとってストレスとなるケースもあるのでグループ分けを行って取り組むのがおすすめです。

学習療育

学習療育では、読み書きや計算などを中心とした学習行動の向上を目的とするケースが多いです。その他、勉強中は集中することや、話し言葉を聞き取ることなど、学校などの教育機関で生活を送る上ために必要な能力向上も目的としています。

内容例

  • 読み、書き
  • 計算
  • 話している言葉を理解する
  • 自分で話せる言葉(語彙)を増やす
  • 授業中に着席する練習

療育プログラムを考えるポイント

学習療育では、得意不得意が顕著に表れる傾向にあります。多動など同じ事に集中して取り組むのが苦手な子どもには、短時間で終了できる内容などスモールステップで取り組めるプログラムを考えるとよいでしょう。一方で、集中することが得意な子どもにはワークシステムをしっかりと構築して得意とする分野に自発的に取り組める環境を整えることも大切です。

コミュニケーション

コミュニケーション療育では、主にソーシャルスキルの向上を目的とします。

内容例

  • 挨拶
  • 会話
  • 相手の感情を考える
  • 自分の感情を伝える

療育プログラムを考えるポイント

発達障害の特性によっては、ソーシャルスキルの習得が困難な子どもも少なくないため、個々の特性に合わせたプログラムを考える必要があります。また、ソーシャルスキルはゲームとして導入すると子ども達も楽しんで取り組みやすくなるでしょう。

生活

生活療育では、日常生活の中で必要とされるスキルの習得を目的にします。スキル習得の延長として、自立することを目的としていることも意識して取り組みましょう。

内容例

  • 食事のマナー
  • 排泄トレーニング
  • 身だしなみ
  • 交通ルールの習得
  • 清掃や整理整頓

療育プログラムを考えるポイント

日常生活に必要とするスキルの習得には反復練習が求められます。特に特性を理解した内容が求められるテーマでもあるため、応用行動分析などのアプローチ方法を元に取り組み方を考えてみてください。固定したプログラムを強制的に遂行するのではなく、柔軟に対応しやすいざっくりとしたプログラム(方針と目標しか決めないでおく等)で取り組むと良いでしょう。

個別支援計画書の作成については以下のコラムでも詳しく紹介しています。
個別支援計画書の作成について知りたい人はぜひ参考にしてみてください。


【療育における個別支援計画書の書き方を徹底解説!放課後等デイサービス向けの記入例も紹介】のページはこちらをクリック

話題の療育プログラム「プログラミング」ってどんなもの?

2020年度から小学校教育でプログラミング授業が必修化されました。療育の現場でも、プログラミングを用いた取り組みが徐々に注目を集めています。

プログラミングは、正確な規則性があるため、「曖昧」や「例外」などの理解が困難な特性を持つ子どもと、特に相性が良いと考えられています。プログラミングを学ぶだけでなく、規則性のある考え方を日常生活に応用することで、これまで苦手としていたことを克服したという例も聞かれます。

ただし、専門的な知識を持つ指導員が多くないことや、設備導入が難しいこともあり、まだ一般的に普及されているとは言い難いでしょう。療育の現場も徐々にIT化が進んでいます。近い将来、当たり前にプログラミング療育が取り入れられるようになる可能性も否定できません。機会があれば、プログラミング療育についても知見を深めておくのがおすすめです。
子どもの発達を支援するためにも、療育プログラムは個々の特性を理解することから始めるのがよいでしょう。今必要としているもの、今後必要とされるものを分析し、子どもにとって無理なく取り組める療育プログラムを考えてみてください。

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